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発声時のTA・CT・LCA・PCAとは?声帯を動かす4つの筋肉の役割を初心者向けに解説

執筆者の写真: 内田のボイトレ
内田のボイトレ
10月9日
読了時間: 11分

はじめに

声や歌については、文章で説明すると、

どうしても分かりにくくなってしまうことがあります。

僕自身も、ボイトレや声について新しい知識を学んだとき、「なるほど」と頭では分かっても、実際に声を出してみるとすぐにはできないことがたくさんありました。

だからこそ、この記事では難しい内容もできるだけ分かりやすくまとめています。

すべてを一度で理解する必要はありません。

「そういう考え方もあるんだな」「これ、自分にも当てはまるかも」

そんなふうに、皆さんのボイトレや歌の練習の何か一つのヒントになれば嬉しいです。

そして、文章を読んでも「自分の場合はどうなんだろう?」と思ったら、ぜひ体験レッスンで直接質問してください。

実際に声を出しながら、一緒に確認していきましょう。

歌を勉強していると、

「TA筋」

「CT筋」

「LCA」

「PCA」

という言葉を聞くことがあります。

特に高音や地声・裏声について調べていると、

「TAは地声に関係する」

「CTは高音に関係する」

といった説明を目にする事もあります。

確かに、それぞれの筋肉には特徴的な役割があります。

しかし、実際の発声は、

「この筋肉だけを使えば、この声になる」

というような単純な仕組みではありません。

TA・CT・LCA・PCAなどの喉頭内筋は、声帯の位置や形、張力、声門の開閉などを協調して調整しています。

今回は、この4つの筋肉について、

「発声するときに何をしているのか?」

という視点から整理してみます。

TAとは?

TAは、

Thyroarytenoid muscle

の略です。

日本語では、

甲状披裂筋(こうじょうひれつきん)

と呼ばれます。

TAは声帯の中にある筋肉を含む筋群で、声帯の長さや形、内転などに関係します。

特に声帯の振動部分に近い領域は、

声帯筋(vocalis)

と呼ばれることがあります。

TAの主な役割

TAには、いくつかの働きがあります。

大きく考えると、

  • 声帯の内転に関与する

  • 声帯の張力や形状の調整に関与する

  • 声帯の厚みの調整に関係する

  • F0(基本周波数)の調整に関与する

などです。

ただし、

「TA=声帯を厚くする筋肉」

と完全に単純化するのも適切ではありません。

実際には、TAの活動量やCTなど他の筋肉との組み合わせによって、声帯の形状や振動状態が変化します。研究でも、TAとLCAの活動を組み合わせることで、より完全な声門閉鎖が得られることが示されています。

TAが発声するときにしていること

声を出すためには、声帯が適切な位置関係になり、肺からの空気によって声帯が振動できる状態を作る必要があります。

TAは、その中で声帯の内転や形状の調整に関わります。

例えば、

TAだけ

LCAだけ

では、それぞれ閉鎖できる部分が異なります。

研究では、LCAの活動だけでは声帯の後方側に閉鎖されない部分が残り、TAだけでは別の部分に隙間が残りました。

TAとLCAを組み合わせることで、より完全な声門閉鎖が得られています。

つまり、

TA=閉じる

と覚えるだけではなく、

「TAも声門閉鎖を作るための重要な要素の一つ」

と考えるほうが実際の発声に近いでしょう。

CTとは?

CTは、

Cricothyroid muscle

の略です。

日本語では、

輪状甲状筋(りんじょうこうじょうきん)

と呼ばれます。

CTは甲状軟骨と輪状軟骨の間にある筋肉です。

CTの主な役割

CTの代表的な働きは、

声帯を伸ばし、張力を調整すること

です。

CTが収縮すると、甲状軟骨と輪状軟骨の位置関係が変化し、それによって声帯が長くなり、張力が変化します。

そのため、CTは、

F0(基本周波数)を調整する重要な筋肉

として知られています。

一般的には、

「CTが活動すると高い音が出やすくなる」

と説明されます。

これは大まかな理解としては役立ちます。

ただし、

CT=高音専用の筋肉

ではありません。

実際のF0は、CTだけで決まるわけではありません。

TAやLCAなどの活動、声帯の状態、呼気圧などとの組み合わせによって変化します。研究でも、CT・TA・LCA/IAの活動の組み合わせによって、F0や声門の状態が変化することが示されています。

CTとTAは「敵同士」ではない

ボイトレでは、

「TAとCTは逆の働きをする」

という説明を聞くことがあります。

これは学習上のイメージとして使える場合があります。

しかし、実際には、

TAとCTは互いに協調しながらF0や声帯の状態を調整します。

つまり、

「TAを使うか、CTを使うか」

という二択ではありません。

例えば高音を出すときにも、

CTだけが働いているわけではありません。

TAを含む複数の喉頭筋と呼気などが協調して、その音高・音色・声門状態を作っています。

LCAとは?

LCAは、

Lateral Cricoarytenoid muscle

の略です。

日本語では、

外側輪状披裂筋(がいそくりんじょうひれつきん)

と呼ばれます。

LCAは、声帯を閉じる方向に働く、

内転筋

の一つです。

LCAの主な役割

LCAは、

披裂軟骨を回転させ、声帯を内転させる

働きがあります。

簡単に言えば、

声門を閉じる方向へ働く筋肉

です。

ただし、ここでも、

「LCA=声帯を閉じるだけ」

ではありません。

LCAがどの程度活動するかによって、声門の形や閉鎖の状態が変化します。

LCAとTAは何が違う?

ここは非常に面白いところです。

TAとLCAは、どちらも声門閉鎖に関係します。

しかし、同じ働きをしているわけではありません。

研究では、

LCAの活動では声門後方側の閉鎖が進み、TAの活動では声帯の膜様部の閉鎖が進む

という違いが観察されています。

そして、TAとLCAが組み合わさることで、より完全な声門閉鎖が得られました。

つまり、

TAとLCAは協力して声門閉鎖を作っている

と考えることができます。

これは、

「声帯を閉じる筋肉は一つ」

ではないことを示しています。

PCAとは?

PCAは、

Posterior Cricoarytenoid muscle

の略です。

日本語では、

後輪状披裂筋(こうりんじょうひれつきん)

と呼ばれます。

PCAは、4つの筋肉の中でも特徴的です。

なぜなら、

声帯を外転させる主要な筋肉

だからです。

つまり、

声門を開く方向に働く筋肉

です。

PCAは「発声に必要ない」のか?

ここは誤解されやすいところです。

「PCAは声帯を開く筋肉だから、声を出すときには必要ない」

と考えてしまうかもしれません。

しかし、実際の喉頭は、

開く筋肉と閉じる筋肉の協調

によって調整されています。

PCAは呼吸時の声門開大に重要ですが、発声時にも声門幅の調整に関与することが研究されています。

つまり、

PCA=呼吸専用

とも言い切れません。

声を出しているときにも、喉頭の状態を調整する一部として関わっています。

4つの筋肉を簡単に整理すると

ここまでを一度整理してみましょう。

筋肉

英語

大まかな役割

TA

Thyroarytenoid

声帯の内転・形状・張力などの調整

CT

Cricothyroid

声帯を伸ばし、張力・F0の調整に関与

LCA

Lateral Cricoarytenoid

声帯を内転させ、声門閉鎖に関与

PCA

Posterior Cricoarytenoid

声帯を外転させ、声門を開く

ただし、これはあくまで大まかな整理です。

実際の発声では、これらの筋肉が単独で働くのではなく、複数の筋肉が協調して働きます。

「地声=TA」「裏声=CT」と考えていい?

これは、ボイトレでは特に注意したいところです。

例えば、

「地声はTA」

「裏声はCT」

という説明があります。

これは、発声の仕組みを理解するための簡略化されたモデルとして使われることがあります。

しかし、

地声=TAだけ

裏声=CTだけ

と考えるのは正確ではありません。

実際の発声では、TA・CT・LCA・PCAなど複数の筋肉の協調があります。

さらに、M1・M2などの声区の概念と、個々の喉頭筋の活動を一対一で対応させることもできません。

声区は、声帯の振動状態や喉頭筋の活動、声道条件などを含めた複雑な現象として考える必要があります。

そのため僕は、

「地声だからTA、裏声だからCT」

という一対一の説明には注意しています。

高音になるとCTだけが働くわけではない

高音の説明でも、同じ注意が必要です。

「高音=CT」

と覚えると分かりやすいのですが、実際にはもっと複雑です。

研究では、CTの活動がF0を上昇させる重要な役割を持つ一方、TAやLCAなどとの組み合わせによってF0や声門状態が変化することが示されています。

つまり、

高音を出すためにCTが重要

ということと、

高音ではCTだけが働く

ということは別です。

ここを分けて考える必要があります。

発声では「4つの筋肉のバランス」が重要

例えば声を出すとき、

TA

声帯の内転や形状、張力などを調整する。

CT

声帯を伸ばし、張力やF0の調整に関与する。

LCA

声帯を内転させ、声門閉鎖に関与する。

PCA

声門を開く方向に働き、呼吸や発声時の声門幅の調整に関与する。

このような働きがあります。

しかし、実際には、

TAが何%、CTが何%

という単純な話ではありません。

音程、音量、母音、発声様式、声質などによって、喉頭の状態は変化します。

声の「音程」は筋肉だけで決まらない

もう一つ重要なのが、

音程=喉の筋肉だけ

ではないということです。

基本周波数(F0)は、声帯の振動によって生まれます。

そのF0には、

  • 声帯の長さ

  • 声帯の張力

  • 声帯の質量

  • 声帯の形状

  • 喉頭筋の活動

  • 呼気圧など

複数の要素が関係します。

Titzeのレビューでも、F0の制御はCTとTAの協調だけではなく、肺からの圧力などを含む複数の要素との関係として説明されています。

そのため、

「高音が出ないからCTを鍛えればいい」

というように、一つの筋肉だけを原因として考えるのは危険です。

ボイトレでは「筋肉を直接動かす」のではなく、結果を見る

では、実際のボイトレではどう考えればいいのでしょうか?

ここからは、

内田のボイトレとしての指導上の考え方

です。

僕は、TA・CT・LCA・PCAについて勉強することは非常に大切だと思っています。

ただし、レッスンで、

「今、TAを30%動かしてください」

「今度はLCAを強くしてください」

といった指示をすることが、必ずしも現実的とは限りません。

なぜなら、これらの筋肉を普段の発声で自分自身が直接見ることはできないからです。

そのため、

筋肉の知識 → 声に現れる変化を観察する

という考え方が重要になります。

例えば、

「この練習をすると音程が安定した」

「この方法だと声門閉鎖が強くなったように感じる」

「この母音では声が出しにくい」

「この方法では高音が楽になった」

などです。

そこから、

「喉頭では何が起きている可能性があるのだろう?」

と考えていきます。

筋肉の名前を知ることが目的ではない

TA・CT・LCA・PCAを覚えること自体が、ボイトレの目的ではありません。

大切なのは、

「なぜ今の声になっているのか?」

を考えるための知識として使うことです。

例えば、

「高音が出ない」

という一つの問題でも、

  • 音程の問題なのか

  • 声門閉鎖の問題なのか

  • 呼気流量の問題なのか

  • 声帯振動の状態なのか

  • 声道の調整なのか

  • 母音による影響なのか

  • 過剰な努力性発声なのか

など、さまざまな可能性があります。

その中の一部として、

TAやCTなどの喉頭筋の協調を考えることができます。

「筋肉を鍛える」という表現にも注意

ボイトレでは、

「CTを鍛える」

「TAを鍛える」

という表現を使うことがあります。

もちろん、筋肉の活動や運動制御を考えるうえで、このような表現が役立つ場面はあります。

しかし、

「この筋肉を鍛えれば、必ず高音が出る」

という意味ではありません。

発声は複数の筋肉、声帯振動、呼気、声道などが協調して成立する運動です。

そのため、

特定の筋肉を強くすればすべて解決する

と考えるより、

必要な状況で適切な協調ができること

を考えるほうが、実際の発声には近いと僕は考えています。

TA・CT・LCA・PCAを「チーム」として考える

僕は、4つの筋肉を理解するとき、

一つひとつの筋肉を別々に覚えるより、チームとして考える

と分かりやすいと思っています。

例えば、

CTだけが仕事をするのではなく、

TAやLCAなどと協調しながら声帯の状態を調整する。

PCAも単純に「声を出すときには使わない筋肉」ではなく、声門の開閉や幅の調整に関係します。

つまり、

発声は筋肉同士の協調によって成立している

と考えることができます。

ボイトレで役立つ覚え方

初心者の方は、まず次のように覚えてみてください。

TA

声帯の内転や形状・張力などを調整する

CT

声帯を伸ばし、張力やF0の調整に関与する

LCA

声帯を内転させ、声門閉鎖に関与する

PCA

声帯を外転させ、声門を開く方向に働く

そして、

「これらは単独ではなく協調して働く」

という一文をセットで覚えておくことをおすすめします。

まとめ

TA・CT・LCA・PCAは、発声に関係する代表的な喉頭内筋です。

簡単に整理すると、

  • TA:声帯の内転や形状・張力などの調整に関与

  • CT:声帯を伸ばし、張力やF0の調整に関与

  • LCA:声帯を内転させ、声門閉鎖に関与

  • PCA:声帯を外転させ、声門を開く方向に働く

という特徴があります。

ただし、

地声=TA

裏声=CT

高音=CTだけ

というように、一対一で考えることはできません。

実際の発声では、TA・CT・LCA・PCAなどが協調しながら、声帯の位置・形状・張力・声門状態などを調整しています。

だからこそ、ボイトレでは、

「この筋肉を使えば正解」

と考えるより、

「今の声では何が起きているのか?」

「何を変えると声はどう変化するのか?」

を観察することが大切だと僕は考えています。

筋肉の名前を覚えることは、ゴールではありません。

その知識を使って、

声を観察するための視点を増やす。

それが、ボイトレにおける解剖学・生理学の知識の使い方の一つだと思っています。

参考文献

Titze IR.Current topics in voice production mechanisms. Acta Otolaryngol. 1993;113(3):421–427.DOI: 10.3109/00016489309135838.

Chhetri DK, Neubauer J.Differential roles for the thyroarytenoid and lateral cricoarytenoid muscles in phonation. Laryngoscope. 2015;125(12):2772–2777.DOI: 10.1002/lary.25480.

Chhetri DK, et al.Influence and interactions of laryngeal adductors and cricothyroid muscles on fundamental frequency and glottal posture control.

Hirano M, et al.The study of laryngeal muscle activity in normal human subjects and in patients with laryngeal dystonia using multiple fine-wire electromyography.

Chhetri DK, et al.Three-dimensional posture changes of the vocal fold from paired intrinsic laryngeal muscles.

 
 

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