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歌を真似できないのはなぜ?インプット力とアウトプット力の関係|内田のボイトレ

執筆者の写真: 内田のボイトレ
内田のボイトレ
10月9日
読了時間: 11分

はじめに

声や歌については、文章で説明すると、

どうしても分かりにくくなってしまうことがあります。

僕自身も、ボイトレや声について新しい知識を学んだとき、「なるほど」と頭では分かっても、実際に声を出してみるとすぐにはできないことがたくさんありました。

だからこそ、この記事では難しい内容もできるだけ分かりやすくまとめています。

すべてを一度で理解する必要はありません。

「そういう考え方もあるんだな」「これ、自分にも当てはまるかも」

そんなふうに、皆さんのボイトレや歌の練習の何か一つのヒントになれば嬉しいです。

そして、文章を読んでも「自分の場合はどうなんだろう?」と思ったら、ぜひ体験レッスンで直接質問してください。

実際に声を出しながら、一緒に確認していきましょう。

「知っている曲」なのに、歌い方を再現できないのはなぜ?

例えば、あいみょんさんの「マリーゴールド」のAメロ。

歌詞の、

「真面目にみつめた 君が恋しい」

という部分を考えてみます。

特に最後の**「恋しい」**の部分。

このフレーズを何度も聞いた事がある人でも、

「歌詞は分かる」

「メロディーもなんとなく分かる」

「曲を何度も聞いている」

にもかかわらず、

実際に歌ってみると、元の歌唱のフレーズを再現できていない

という事があります。

僕はボイトレの現場で、こういうケースをよく考えます。

そして、ここで一度考えてみたいのが、

「本当にそのフレーズを聞き取れているのだろうか?」

という事です。

インプットされていないものは、正確にアウトプットできない

僕は歌の再現を考えるとき、

インプット → アウトプット

という順番が非常に大切だと考えています。

例えば「恋しい」というフレーズを再現するとします。

このとき、頭の中に必要なのは、単に、

「恋しいという歌詞」

だけではありません。

実際には、

  • どの音から始まるのか

  • 音程がどう動くのか

  • どのタイミングで言葉が入るのか

  • どの音を長くするのか

  • どこで音が弱くなるのか

  • どこにアクセントがあるのか

  • 子音がどのタイミングで入るのか

  • 母音をどのようにつなげているのか

  • フレーズ全体がどこに向かっているのか

など、たくさんの情報があります。

つまり、

歌を再現するためには、再現したい情報そのものをインプットしておく必要があります。

「聞いている」と「聞き取っている」は違う

ここが今回の記事で一番伝えたい部分です。

例えば「マリーゴールド」を100回聞いたとします。

それだけ聞いていれば、

「この曲は知っている」

「歌詞も覚えている」

「次にどんなフレーズが来るかも分かる」

という状態にはなるでしょう。

しかし、それだけでは、

本人の歌い方を正確に再現できるとは限りません。

なぜなら、

「曲を聞く」

という行為の中で、何に注意を向けているかによって、取り込まれる情報が違うからです。

例えば「恋しい」をどう聞いている?

ここで、実際に「恋しい」という短いフレーズを考えてみましょう。

多くの人は、

「恋しい」

という言葉そのものを聞いています。

しかし、歌唱を再現したいのであれば、それだけでは足りません。

例えば、

① どの音から始まっている?

「恋しい」の最初の音は、前の音からどのようにつながっているでしょうか。

② 音程はどう動いている?

最初の音から、

上がるのか?下がるのか?同じなのか?

を聞きます。

さらに細かく、

「どのくらい上がるのか」

まで聞いていきます。

③ リズムはどうなっている?

「恋しい」という言葉を、

文字通り均等に、

「こ・い・し・い」

と歌っているとは限りません。

実際の歌唱では、音の長さやタイミングに違いがあります。

そのため、

「どの音がどのタイミングに置かれているのか」

を聞く必要があります。

④ どの音が長い?

同じ歌詞でも、

音の長さが変わるだけで印象は大きく変わります。

「どこを伸ばしているのか?」

「どこを短くしているのか?」

を聞き取ってみます。

⑤ 声はどのように入っている?

同じ音程・同じリズムでも、

  • 強く入る

  • 軽く入る

  • 息っぽく入る

  • 芯を持って入る

などで印象が変わります。

つまり、

音程が合っていれば完全に同じ歌唱になるわけではありません。

「歌詞を覚えた」と「歌唱を覚えた」は違う

ここを分けて考えると、今回の問題がかなり分かりやすくなります。

例えば、

「恋しい」

という歌詞を覚えている。

これは、

言語情報を覚えている

状態です。

一方、

「恋しい」というフレーズを、

  • 音程

  • リズム

  • 音価

  • 発音

  • 強弱

  • 声質

  • フレーズの方向性

まで含めて覚えている。

こちらは、

歌唱情報を覚えている

状態です。

この2つは同じではありません。

「なんとなく歌える」が一番危ない?

もちろん、「なんとなく歌える」事自体が悪いわけではありません。

カラオケを楽しむだけなら、十分な場合もあります。

しかし、

「本人の歌い方を再現したい」

という目的なら、

「なんとなく覚えている」

状態から、

「何を再現するのかを具体的に覚えている」

状態に変えていく必要があります。

なぜアウトプットが違ってしまうのか?

例えば、本人の歌唱を聞いたあとに、

「じゃあ歌ってみてください」

と言われたとします。

でも頭の中にある情報が、

「恋しいという歌詞」

と、

「だいたいこの辺のメロディー」

だけだったらどうでしょうか。

当然、本人の歌唱と細かい部分まで一致させるのは難しくなります。

これは、

アウトプットする能力だけの問題ではありません。

そもそも、

アウトプットするための材料が十分に入っていない

可能性があります。

「歌が下手だから真似できない」とは限らない

ここは、レッスンでも大切にしたいところです。

「先生の歌を真似してください」

と言われてできなかったとします。

すると、

「自分は歌が下手だから」

と考えてしまう人がいます。

しかし、

聞き取れていない情報を、声だけで正確に再現する事は難しい

のです。

例えば、

「この音はどのくらい長い?」

「どこで声を弱くしている?」

「最初の音はどこから入っている?」

と聞かれて、

「分からない」

のであれば、

まず必要なのは発声練習ではなく、

聞く練習

かもしれません。

歌を真似するときは「歌わない時間」が必要

そこで僕がおすすめしたいのが、

最初から一緒に歌わない事

です。

まずは元の歌唱を聞きます。

例えば「恋しい」の部分だけを取り出して、

1回目

歌詞を確認する。

2回目

リズムだけ聞く。

3回目

音程の動きだけ聞く。

4回目

音の長さを聞く。

5回目

声の入り方を聞く。

このように、

聞く目的を変えていきます。

「何を聞くか」を決めると、同じ曲でも違って聞こえる

例えば、

「音程だけを聞いてください」

と言われたら、

今まで気づかなかった音の動きが聞こえてくるかもしれません。

「リズムだけ聞いてください」

と言われれば、

今まで意識していなかった言葉の入り方が聞こえてくるかもしれません。

つまり、

同じ音源でも、何に注意を向けるかによって得られる情報が変わります。

これが、

「聞いている」と「聞き取っている」の違い

の一つです。

実際にアウトプットしてみる

インプットしたら、次は歌ってみます。

ここでは、

完璧に歌おうとしなくて構いません。

まず、

「自分は今、何を再現できているのか」

を確認します。

例えば、

音程は合っている。

でも、

リズムが違う。

という場合があります。

あるいは、

音程とリズムは合っている。

でも、

音の長さが違う。

という場合もあります。

録音すると「聞いたつもり」が分かる

ここで録音が非常に役立ちます。

自分では、

「かなり似せた」

と思っていても、

元の歌唱と自分の歌唱を交互に聞くと、

「全然違う」

という事があります。

例えば、

元の歌唱

「ここで音が伸びている」

↓

自分の歌唱

「そこを短くしている」

という違いが見つかるかもしれません。

この差を自分で確認できる事が重要です。

「聞く→歌う→比較する」

ここから、

インプット → アウトプット → フィードバック

というサイクルが始まります。

STEP1 聞く

元の歌唱を注意深く聞く。

↓

STEP2 頭の中で再現する

歌わずに、頭の中でフレーズを思い浮かべる。

↓

STEP3 歌う

実際に声を出す。

↓

STEP4 録音する

自分の歌を記録する。

↓

STEP5 比較する

元の歌唱と聞き比べる。

↓

STEP6 違いを一つ見つける

「今回はリズムが違う」

など、一つに絞ります。

↓

STEP7 もう一度歌う

修正して再び歌います。

実は「頭の中で歌えるか」も大切

ここで面白いのが、

声を出す前に、そのフレーズを頭の中で再現できるか

という事です。

歌唱研究では、音の高さを歌って模倣する能力と、頭の中で音をイメージする能力との関連が報告されています。2019年の研究では、ピッチのイメージ、短期記憶、音高弁別、音楽経験などがピッチ模倣能力を予測する要因として検討されています。

また、2025年の研究でも、歌唱によるピッチ模倣には、知覚だけでなく、発声に向けた運動計画や聴覚イメージが関係する事が示されています。

つまり、

「聞く」→「頭の中に音を作る」→「声にする」

という流れがあります。

インプットが曖昧だと、アウトプットも曖昧になる

例えば、

「恋しい」のフレーズを、

「なんとなくこうだった」

という状態で歌ったら、

当然、

「なんとなく似ている」

歌になりやすいでしょう。

反対に、

「最初はこの音」

「ここで少し上がる」

「この音が長い」

「ここで声が弱くなる」

など、頭の中のモデルが具体的になっていれば、

それを声に再現するための材料が増えます。

そのため、

インプットの精度が、アウトプットの精度に影響する。

という考え方は、歌の再現を考えるうえで非常に重要です。

ただし、これは「インプットさえ良ければ必ず歌える」という意味ではありません。

聞き取れていても、

  • 音域の問題

  • 発声の問題

  • 発音の問題

  • リズムの問題

  • 運動制御の問題

などで再現できない場合もあります。

だからこそ、

インプットの問題なのか、アウトプットの問題なのか

を分けて考える事が大切です。

ボイトレでは「できない原因」を分解する

例えば「恋しい」のフレーズが再現できない場合。

僕なら、

① 元の歌唱を正確に聞けている?

↓

聞けていないなら、インプットの練習。

② 頭の中でフレーズを再現できる?

↓

できなければ、聴覚イメージや記憶の問題を考える。

③ 頭では分かっている?

↓

それでも歌えなければ、アウトプット側を確認。

④ 音程は合っている?

↓

違うなら音高の再現を確認。

⑤ リズムは合っている?

↓

違うならタイミングを確認。

⑥ 発音は合っている?

↓

違うなら子音・母音の動きを確認。

⑦ 元の歌唱と比べて、何が違う?

↓

録音してフィードバック。

このように分けていきます。

「先生に教えてもらう」だけで終わらせない

レッスンでは、

「ここが違います」

と先生から指摘してもらう事も大切です。

しかし、最終的には、

自分で違いを見つけられるようになる事

を目指したいと僕は考えています。

例えば、

「先生に言われたから直す」

から、

「今の自分の歌は、元の歌唱より最後の音が短い」

と自分で気づけるようになる。

この変化は大きいです。

なぜなら、自宅で練習するときにも、自分で修正できるようになるからです。

ボイトレは「声を出す練習」だけではない

ボイトレというと、

「声を出して練習する」

というイメージが強いと思います。

もちろん、それも重要です。

しかし、

何を出すのかを正確に聞き取る事

も同じくらい大切です。

特に、

「好きな歌手の歌い方を真似したい」

「原曲に近づけたい」

という場合には、

耳で聞く力

が非常に重要になります。

まとめ

例えば、あいみょんさんの「マリーゴールド」のAメロにある「恋しい」のような短いフレーズ。

何度も聞いているのに、実際に歌うと元の歌唱を再現できない。

そんなとき、

「自分は歌が下手なんだ」

と決めつける必要はありません。

まず考えてみてほしいのは、

「僕は、このフレーズを本当に細かく聞けているだろうか?」

という事です。

歌を再現するためには、

  • 歌詞

  • 音程

  • リズム

  • 音の長さ

  • 発音

  • 強弱

  • 声の入り方

  • フレーズの方向性

など、たくさんの情報が必要です。

そして、

聞く

↓

頭の中で再現する

↓

歌う

↓

録音する

↓

比較する

↓

修正する

というサイクルを作ります。

僕は、

インプットできていないものを、正確にアウトプットするのは難しい。

と考えています。

だから、歌がうまく再現できないときは、

「もっと声を出そう」

だけではなく、

「まず、もっと聞いてみよう」

と考えてみてください。

そして、

「何を聞けばいいのか分からない」

のであれば、そこを一緒に整理するのもボイトレの役割だと思っています。

最終的には、

先生から、

「ここが違います」

と言われなくても、

「今の自分は、元の歌唱とここが違う」

と自分で気づけるようになる。

そこまでできるようになると、自主練習の質も大きく変わってきます。

ボイトレは、声を出す事だけではありません。

聞く力を育て、自分の声を観察し、自分で修正できる力を身につける事。

それも、内田のボイトレが大切にしている考え方の一つです。

参考文献

  • Greenspon EB, Pfordresher PQ. Pitch-specific contributions of auditory imagery and auditory memory in vocal pitch imitation. Attention, Perception, & Psychophysics. 2019;81:2473–2481. DOI: 10.3758/s13414-019-01799-0.

  • Pfordresher PQ, Halpern AR. Auditory imagery and the poor-pitch singer. Psychonomic Bulletin & Review. 2013;20:747–753. DOI: 10.3758/s13423-013-0401-8.

  • Greenspon EB, Pruitt TA, Halpern AR, Pfordresher PQ. Effects of vocal-motor interference on vocal pitch imitation. Attention, Perception, & Psychophysics. 2025;87:1717–1728. DOI: 10.3758/s13414-025-03073-y.

  • Belyk M, Kotz SA. The right sound at the right time: Cerebellar and ventral striatal involvement in imitating pitch and timing. Journal of Neurolinguistics. 2025;74:101243. DOI: 10.1016/j.jneuroling.2024.101243.

※この記事では、特定の歌唱を再現する際の「インプット」と「アウトプット」の関係を、音楽知覚・聴覚イメージ・運動計画の観点から説明しています。個人によって、聞き取り・記憶・音程・リズム・発声など、つまずく場所は異なります。

 
 

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