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歌うとすぐ疲れるのはなぜ?声が疲れやすい原因とボイトレの考え方

執筆者の写真: 内田のボイトレ
内田のボイトレ
10月7日
読了時間: 12分

はじめに

声や歌については、文章で説明すると、

どうしても分かりにくくなってしまうことがあります。

僕自身も、ボイトレや声について新しい知識を学んだとき、「なるほど」と頭では分かっても、実際に声を出してみるとすぐにはできないことがたくさんありました。

だからこそ、この記事では難しい内容もできるだけ分かりやすくまとめています。

すべてを一度で理解する必要はありません。

「そういう考え方もあるんだな」「これ、自分にも当てはまるかも」

そんなふうに、皆さんのボイトレや歌の練習の何か一つのヒントになれば嬉しいです。

そして、文章を読んでも「自分の場合はどうなんだろう?」と思ったら、ぜひ体験レッスンで直接質問してください。

実際に声を出しながら、一緒に確認していきましょう。

歌うとすぐ疲れるのはなぜ?

「少し歌っただけなのに声が疲れる」

「カラオケの後半になると高音が出なくなる」

「最初は歌えるのに、何曲か歌うと喉が苦しくなる」

このような悩みは、ボイトレでもよく出てきます。

ただし、

「声が疲れる=声帯が弱い」

とは限りません。

声の疲労感には、発声に必要な筋肉や組織の働きだけでなく、声を出すためにどのくらい努力しているか、どのくらいの時間・音量・音域で声を使ったか、休憩によってどの程度回復するかなど、さまざまな要素が関係します。

声の疲労は複数の要素が関係する現象として研究されており、現在も完全に一つの原因だけで説明できるものではありません。

そのため、

「なぜ疲れるのか?」を症状ごとに分けて考える

ことが大切です。

「疲れる」とは、何が疲れているの?

まず考えておきたいのが、

「声が疲れる」という感覚は、一つではない

という事です。

例えば、

  • 喉が重い

  • 声を出すのに力が必要になる

  • 高音が出しにくくなる

  • 声量が出なくなる

  • 声がかすれてくる

  • 声を出し続けるのが嫌になる

  • 歌うと喉周辺が疲れる

  • 休むと回復する

など、いろいろな感覚があります。

研究でも、声の疲労には「声を出すための努力が増える感覚」「身体的な不快感」「声の使用が制限される感覚」「休息による回復」などが関連すると整理されています。

つまり、

「疲れた」という一言だけでは、原因までは分かりません。

原因① 声を出すために必要以上の力を使っている

歌うとすぐ疲れる人の中には、

声を出すために必要以上の努力をしている

ケースがあります。

例えば、

  • 高音になると強く押す

  • 大きな声を出そうとして力む

  • 声を安定させようとして喉周辺を固める

  • 音程を外さないように力でコントロールする

  • 声を前に出そうとして頑張りすぎる

などです。

このような発声では、本人は「ちゃんと声を出そう」としているだけでも、結果として発声に必要な努力が大きくなっている可能性があります。

声の疲労についての研究では、長時間の発声に伴う神経・筋肉・生体力学的な変化や、過剰な筋緊張などが関連する可能性が検討されています。

ただし、

「疲れる=必ず喉に力が入っている」

と断定することもできません。

ここは症状を見ながら考える必要があります。

原因② 高音を出すと急に疲れる

「低い音は大丈夫なのに、高音になると急に疲れる」

という場合があります。

高音では、単純に声帯が「速く振動すればいい」というだけではありません。

音程が上がるにつれて、声帯の振動状態や声帯同士の接触、喉頭周辺の筋肉の働きなどが変化します。

そのため、高音域で必要な調整がうまくできていない場合、

高音を出すために必要以上の努力を使ってしまう

可能性があります。

例えば、

「高い音=もっと強く出す」

と考えていると、音程が上がるたびに発声を強くしてしまうことがあります。

最初は出せても、何度も繰り返すうちに疲れやすくなる場合があります。

以前の記事でも説明したように、

「高音が出る」ことと「高音を無理なく繰り返せる」ことは別です。

原因③ 大きな声を出すと疲れる

「普通の声なら大丈夫だけど、カラオケで大きな声を出すとすぐ疲れる」

というケースもあります。

声の大きさには、呼気圧、声帯の閉鎖、声道の状態など複数の要素が関係します。

そのため、

「大きな声=息をたくさん使う」

だけで説明することはできません。

大きな声を出そうとして必要以上に力を使っている場合、発声の努力が増え、疲労感につながる可能性があります。

特に、

「もっと大きな声を出そう」

↓

「もっと力を入れよう」

となってしまうと、声量を上げるたびに発声の負担が増えてしまうことがあります。

原因④ 小さい声でも疲れる

一方で、

「大きな声を出しているわけではないのに疲れる」

という人もいます。

これは、

「小さい声なら絶対に負担が少ない」

とは限らないためです。

声を小さく保とうとして、必要以上に声を抑えたり、声帯の振動を不安定にしたりする場合もあります。

例えば、

「周りに聞こえないように小さく歌う」

「声を出しすぎないように抑える」

という状態が長く続くと、本人にとっては歌いにくさや努力感が増える場合があります。

したがって、

大きい声だから疲れる、小さい声だから疲れない

という単純な関係ではありません。

原因⑤ 歌い始めは大丈夫なのに、後半で疲れる

これは比較的分かりやすいパターンです。

例えば、

1曲目は問題ない。

3曲目くらいから高音が出にくくなる。

さらに歌うと声が出しにくくなる。

このような場合、

声の使用量や時間、音量、音域などの積み重ね

を考える必要があります。

声の疲労は「その瞬間の一回の発声」だけではなく、一定時間声を使った後に感じられる変化として研究されています。

ただし、どの程度歌えば誰でも疲れるのかという一律の基準があるわけではありません。

声の使い方や個人差があるためです。

原因⑥ 疲れると高音が出なくなる

歌っているうちに、

「最初は出ていた高音が出なくなった」

という経験がある人もいると思います。

プロの歌手を対象とした研究でも、声の疲労によって声域などの歌唱機能に一時的な変化を感じるケースが報告されています。

ここでも、

「高音が出なくなった=声帯が壊れた」

とすぐに考える必要はありません。

疲労によって、

  • 発声の努力が増える

  • 声の調整が変わる

  • 音域の使いやすさが変わる

  • 声質が変化する

など、複数の変化が起こる可能性があります。

原因⑦ 「声を安定させよう」と頑張りすぎる

意外と見落とされやすいのが、

声を安定させようとする努力

です。

例えば、

「音程を絶対に外したくない」

「声を揺らしたくない」

「声をまっすぐ出したい」

「高音を落としたくない」

という意識が強くなると、身体を固めて声をコントロールしようとすることがあります。

もちろん、音程や声を安定させること自体が悪いわけではありません。

問題になる可能性があるのは、

「安定させる=力で固定する」

となっている場合です。

声は、完全に固定することで安定するものではありません。

原因⑧ 疲れている日に、いつも通り歌おうとしている

声だけではなく、全身の状態も考える必要があります。

例えば、

  • 睡眠不足

  • 長時間の会話

  • 長時間の歌唱

  • 大きな声を使う時間が長い

  • 体調がよくない

  • 休憩が少ない

などが重なると、いつもと同じ発声でも「きつい」と感じる可能性があります。

ただし、

「睡眠不足だから必ず声が悪くなる」

など、個別の要因と声の疲労を単純に結びつけることはできません。

大切なのは、

「今日はいつもと条件が違わないか?」

と確認することです。

「歌うとすぐ疲れる」を症状別に整理すると

同じ「疲れる」でも、次のように分けてみると原因を考えやすくなります。

症状

考えるポイント

高音だけ疲れる

高音域での発声調整

大きな声で疲れる

声量を上げるときの発声努力

小さい声でも疲れる

声を抑えるための努力や発声の安定性

数曲歌うと疲れる

声の使用時間・音域・音量の積み重ね

高音が出なくなってくる

疲労に伴う発声・声域の変化

喉が締まって疲れる

発声時の過剰な努力や筋緊張など

声がかすれてくる

疲労だけでなく声の状態も確認する必要

歌った後に休むと回復する

声の使用量との関係を観察する

毎回すぐ疲れる

発声方法だけでなく、声の状態や使用環境も含めて確認

これは診断表ではありません。

あくまで、

「疲れる」という症状を一つにまとめず、条件を分けて観察するための表

です。

「何分歌えば疲れる?」だけでは判断できない

「30分歌ったら疲れた」

「1時間歌っても大丈夫だった」

という情報だけでは、その人の発声が良いか悪いかを判断することはできません。

例えば、

静かな曲を小さな声で30分歌う場合と、

大きな音量で高音を多く含む曲を30分歌う場合では、声の使い方が違います。

さらに、

その日の体調や、歌う環境、休憩の有無なども違います。

そのため、

「○分なら安全」というような単純な基準を作ることはできません。

研究でも、声の疲労について客観的な測定方法や許容できる声の使用量については、まだ十分に整理されていない部分があります。

「喉を休めれば解決する」とも限らない

疲れたら休むことは大切です。

ただし、

毎回すぐ疲れる

のであれば、

「休めばいい」

だけで終わらせない方がよい場合があります。

例えば、

「高音になると毎回疲れる」

のであれば、

なぜ高音になると発声の努力が増えるのか?

を考える必要があります。

「大きな声を出すと毎回疲れる」

のであれば、

なぜ声量を上げると急に力が必要になるのか?

を確認する必要があります。

つまり、

休むことと、疲れにくい発声を考えることは別の問題です。

内田のボイトレでは「疲れる場所」だけでなく「疲れる条件」を見る

僕がボイトレで考えたいのは、

「喉が疲れました」

という結果だけではありません。

例えば、

  • どの音域で疲れるのか

  • 大きくすると疲れるのか

  • 小さくしても疲れるのか

  • 上がるときだけ疲れるのか

  • 下がるときも疲れるのか

  • 特定の母音で疲れるのか

  • 何曲目から疲れるのか

  • 高音だけなのか

  • 普通の話し声でも疲れるのか

などを見ていきます。

同じ「疲れる」という悩みでも、条件が違えば考えることも変わります。

だからこそ、

「声が疲れやすい」という結果だけではなく、「どういうときに疲れやすいのか」を見ること

が、ボイトレでは一つのヒントになると考えています。

「出せる」と「繰り返し使える」は違う

僕自身、ボイトレでは、

「その音が一度出たか」だけではなく、「無理なく繰り返し使えるか」

も大切だと考えています。

例えば、高音が一回だけ出たとしても、

その後すぐに喉が苦しくなる。

声が出しにくくなる。

次の曲では高音が出ない。

という状態なら、

「高音が出たから問題ない」

とは言い切れません。

歌では、一回だけ成功することよりも、

必要な音を、必要な場面で、できるだけ無理なく繰り返し使えること

も重要です。

ボイトレで確認したい7つのポイント

「歌うとすぐ疲れる」という方は、まず次のポイントを観察してみてください。

① どの音域で疲れる?

低音なのか、中音なのか、高音なのか。

② 音量を上げると疲れる?

小さい声では大丈夫なのか、大きくすると疲れるのか。

③ 小さい声でも疲れる?

声量を抑えても疲れる場合は、その条件も確認します。

④ 何曲目から疲れる?

歌い始めからなのか、時間が経ってからなのか。

⑤ 特定の母音だけ疲れる?

「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」などで違いがあるか確認します。

⑥ 疲れた後に何が変わる?

高音が出ないのか、声量が落ちるのか、声がかすれるのか。

⑦ 休むと戻る?

休憩すると声が戻るのか、それとも長く残るのか。

このように細かく分けていくと、

「自分は声が弱い」

という大まかな考えから、

「この条件になると発声の努力が増えているのかもしれない」

という、より具体的な観察につながります。

声の疲れと「声を痛めること」は同じではない

ここも混同しないようにしたいところです。

歌った後に疲労感があることと、

声帯などに医学的な問題があることは同じではありません。

一方で、

  • 声のかすれが続く

  • 声が出しにくい状態が続く

  • 痛みがある

  • 普段の会話でも声に問題を感じる

  • 休んでも改善しない

などの場合は、

「単なるボイトレの問題」

と自己判断しないことも大切です。

声の状態について心配な場合は、耳鼻咽喉科などの医療機関で相談することをおすすめします。

ボイストレーナーが発声の練習をサポートすることと、声帯などの医学的な状態を診断することは別だからです。

まとめ

「歌うとすぐ疲れる」という悩みは、

声が弱いから

という一言だけでは説明できません。

声の疲労には、

  • 発声に必要な努力

  • 音域

  • 音量

  • 声を使う時間

  • 発声の調整

  • 身体的な状態

  • 個人差

など、さまざまな要素が関係します。

だからこそ、

「どれくらい歌ったら疲れるか」だけではなく、「どんな条件で疲れるのか」

を観察してみてください。

高音で疲れるのか。

大きな声で疲れるのか。

小さな声でも疲れるのか。

歌い始めから疲れるのか。

それとも、何曲か歌った後に疲れるのか。

こうした違いを見ることで、自分の発声を考えるヒントが見つかるかもしれません。

内田のボイトレでは、

「出せる声」だけではなく、「無理なく使える声」

という視点も大切にしながら、実際に声を出して確認していきます。

「歌うとすぐ疲れるけど、自分の場合は何が原因なんだろう?」

そう感じている方は、ぜひ体験レッスンで直接質問してください。

一緒に声を出しながら確認していきましょう。

参考文献

  • Lemos IO, Marchand DLP, Cunha EO, Silvério KCA, Cassol M. What are the Symptoms that Characterize the Clinical Condition of Vocal Fatigue? A Scoping Review and Meta-Analysis. Journal of Voice. 2025;39(3):844.e1–844.e18. DOI: 10.1016/j.jvoice.2022.12.018.

  • Welham NV, Maclagan MA. Vocal fatigue: current knowledge and future directions. Journal of Voice. 2003;17(1):21–30. DOI: 10.1016/S0892-1997(02)00096-4.

  • Nanjundeswaran C, VanSwearingen J, Verdolini Abbott K. Metabolic Mechanisms of Vocal Fatigue. Journal of Voice. 2017;31(3):378.e1–378.e11. DOI: 10.1016/j.jvoice.2016.09.014.

  • Solomon NP. Vocal fatigue and its relation to vocal hyperfunction. International Journal of Speech-Language Pathology. 2008;10(4):254–266. DOI: 10.1080/14417040701730990.

  • Nanjundeswaran C, VanSwearingen J. Toward a Consensus Description of Vocal Effort, Vocal Load, Vocal Loading, and Vocal Fatigue. Journal of Speech, Language, and Hearing Research. 2020. DOI: 10.1044/2019_JSLHR-19-00057.

 
 

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