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早口が聞き取れない原因とは?音声を聞き取る仕組みと改善方法をボイトレの視点から解説

執筆者の写真: 内田のボイトレ
内田のボイトレ
10月9日
読了時間: 10分

はじめに

声や歌については、文章で説明すると、

どうしても分かりにくくなってしまうことがあります。

僕自身も、ボイトレや声について新しい知識を学んだとき、「なるほど」と頭では分かっても、実際に声を出してみるとすぐにはできないことがたくさんありました。

だからこそ、この記事では難しい内容もできるだけ分かりやすくまとめています。

すべてを一度で理解する必要はありません。

「そういう考え方もあるんだな」「これ、自分にも当てはまるかも」

そんなふうに、皆さんのボイトレや歌の練習の何か一つのヒントになれば嬉しいです。

そして、文章を読んでも「自分の場合はどうなんだろう?」と思ったら、ぜひ体験レッスンで直接質問してください。

実際に声を出しながら、一緒に確認していきましょう。

早口が聞き取れないのはなぜ?

普段の会話や歌を聞いていて、

「ゆっくり話してくれれば分かるのに、早口になると何を言っているのか分からない」

という経験はありませんか?

例えば、

  • 普通の速度なら聞き取れる

  • 少し速くなると聞き取れなくなる

  • 音がつながると分からなくなる

  • 複数人で話すと急に聞き取りにくくなる

  • 歌詞を見れば分かるのに、音だけでは分からない

  • 一度聞けば分かるのに、リアルタイムでは追いつかない

このような場合があります。

これは単純に「耳が悪い」という一言では説明できません。

人が話し声を理解するときには、

音を聞く↓音の特徴を分析する↓音を言葉として区切る↓知っている言葉と照合する↓文章として意味を理解する

という複数の処理が関係しています。

そのため、早口になると、いくつかの処理が同時に難しくなる可能性があります。

① 音が短い時間に詰め込まれる

最も分かりやすいのが、時間的な問題です。

話す速度が速くなると、一つ一つの音が短い時間の中に詰め込まれます。

例えば、

「今日は学校に行きました」

という文章をゆっくり話す場合と、非常に速く話す場合では、同じ言葉でも音声情報を処理できる時間が違います。

速くなるほど、

聞く → 分析する → 言葉として認識する

という処理を短い時間で行わなければなりません。

そのため、普段なら認識できる音声でも、速度が上がると処理が追いつかなくなる場合があります。

② 音が一つずつ独立して聞こえているわけではない

会話では、文字のように、

「こ・ん・に・ち・は」

と一音ずつ明確に区切られて発音されているわけではありません。

実際の音声では、隣り合う音の影響を受けながら連続的に変化しています。

これを音の連続性として考えると分かりやすいでしょう。

つまり、耳に入ってくるのは、

「音A」「音B」「音C」

という完全に独立した音ではなく、

音が連続的に変化している一つの音声信号

です。

そのため、話す速度が速くなると、音の境界がさらに分かりにくく感じる場合があります。

③ 「どこで言葉が区切れるのか」が分からない

日本語では、文章を聞いているときに、必ずしも単語と単語の間に明確な空白があるわけではありません。

例えば、

「これを食べたい」

という音声を聞いたとき、

「これ」「を」「食べたい」

と頭の中で区切っています。

しかし、実際の音声には文章のようなスペースがありません。

そのため、音声を聞きながら、

「ここからここまでが一つの言葉」

と自動的に区切る必要があります。

この処理が難しいと、早口になったときに一気に聞き取りにくくなります。

④ 音だけではなく「予測」しながら聞いている

私たちは、会話を完全に受け身で聞いているわけではありません。

前後の文章や、その場面で起こりそうな言葉を利用して、

「次はこういう言葉が来るかもしれない」

と予測しながら聞いています。

例えば、

「昨日、コンビニで……」

と聞いた場合、

「何かを買った」

「何かを見つけた」

など、ある程度の候補を予測できます。

このような文脈情報は、音声理解を助けます。

逆に、

  • 知らない言葉

  • 専門用語

  • 慣れていない話題

  • 雑音の多い環境

などでは予測が使いにくくなるため、聞き取りが難しくなる事があります。

⑤ 「知っている音」と「聞いた音」を結びつけるのが難しい

例えば、

「ボイトレ」

という言葉を知っている人なら、少し音が崩れていても「ボイトレ」と認識できる可能性があります。

しかし、初めて聞く専門用語の場合、

「今なんて言った?」

となりやすくなります。

つまり、聞き取りには、

音を聞く能力だけではなく、その音を知っている言葉や意味と結びつける能力

も関係しています。

⑥ 発音の違いによって聞き取りやすさが変わる

ここはボイトレとも大きく関係します。

話し手側の発音が、

  • 子音が不明瞭

  • 母音が極端に弱い

  • 音がつながりすぎる

  • 舌の動きが少ない

  • 唇の動きが小さい

  • 声量が小さい

などの場合、聞き手は音を推測しなければならなくなります。

特に早口では、一つ一つの音を丁寧に処理する時間が短いため、発音の不明瞭さがさらに目立つ場合があります。

つまり、

早口が聞き取れない原因は、聞き手側だけにあるとは限りません。

話し手の発音や声の出し方も関係します。

⑦ 歌詞が聞き取れない場合は、さらに条件が増える

歌では、会話とは違う難しさがあります。

歌では、

  • 音程

  • リズム

  • 声質

  • 声量

  • 音域

  • 楽器の音

  • エフェクト

  • 発音

  • フレーズ

などが同時に存在します。

そのため、

「会話なら聞き取れるのに、歌詞になると聞き取れない」

という事も珍しくありません。

特に、

速いテンポ+複雑なリズム+発音が不明瞭

という条件が重なると、言葉の境界を捉えるのが難しくなります。

⑧ 「聞こえている」と「理解できている」は違う

早口を聞き取るときに、

「音は聞こえている」

けれど、

「何を言っているのか分からない」

という事があります。

これは、

聴力の問題と音声理解の問題を分けて考える必要がある

という事でもあります。

音そのものが聞こえていても、

「これは何という言葉なのか?」

という処理が間に合わなければ、内容を理解できません。

そのため、

「聞こえない=耳が悪い」

とは限りません。

では、どうすれば早口を聞き取れるようになる?

ここからがボイトレでも重要な部分です。

いきなり高速音声を何度も聞くより、

聞き取れる条件から少しずつ難しくする

ほうが練習しやすい場合があります。

STEP1 まず「ゆっくりした音声」を聞く

最初は、

「何を言っているのか分かる」

速度で聞きます。

そして、

音と文字を一致させる

練習をします。

例えば、

音声を聞く↓聞こえた言葉を書く↓正解の文章を見る↓もう一度聞く

という方法です。

STEP2 文字を見ながら聞く

次に、歌詞や文章を見ながら音声を聞きます。

ここでは、

「この文字が、実際にはどういう音になっているのか?」

を確認します。

文章と音声を一致させることで、

文字の情報 → 音の情報

という対応関係を作りやすくなります。

STEP3 文字を見ないで聞く

次に文字を隠します。

そして、

「何と言ったのか?」

を聞き取ります。

分からなければ、もう一度文字を見ます。

この、

聞く → 答え合わせ → もう一度聞く

というサイクルが重要です。

STEP4 少しずつ速度を上げる

次に速度を上げます。

例えば、

ゆっくり↓普通↓少し速い↓速い

というように段階を作ります。

「速い音声をひたすら聞けば、いつか慣れる」

とは限りません。

自分が処理できる範囲から少しずつ難しくすることが大切です。

STEP5 「何が聞き取れないのか」を分析する

「早口が聞き取れない」

だけでは、原因が分かりません。

例えば、

A

単語そのものが分からない

B

単語は分かるけれど、境界が分からない

C

子音が聞き取りにくい

D

音がつながると分からなくなる

E

テンポが速いと処理が追いつかない

F

歌になると分からない

など、さまざまです。

ここを分けるだけでも、練習方法が変わります。

ボイトレでは「聞く練習」も大切

ボイトレというと、

「声を出す練習」

をイメージする人が多いと思います。

もちろん発声練習は大切です。

しかし、歌や会話では、

自分の声を聞いて調整する能力

も重要です。

例えば、

「自分では『ば』と言ったつもりなのに、録音すると『ま』に聞こえる」

という事があります。

このとき、

「正しく言え」

だけでは改善しにくい場合があります。

自分の発音を録音して、

自分が意図した音と、実際に出た音の違いを確認する

ことで、修正につなげやすくなります。

これは発声だけでなく、発音やリズムにも応用できます。

「聞き取る力」と「発音する力」は関係している

面白いのは、

自分で発音できる音は、聞き分けやすくなる場合がある

という事です。

例えば、

「ば」と「ま」の違いを自分で練習すると、

他人が発音した「ば」「ま」の違いにも注意を向けやすくなります。

もちろん、すべての聞き取りの問題が発音練習だけで解決するわけではありません。

しかし、

聞く → 発音する → 録音する → 聞き直す

という循環は、歌や発音を学ぶうえで有効な練習方法の一つです。

早口を聞き取る練習で大切な事

僕がボイトレで大切だと考えているのは、

「速く聞く練習」だけにしない事

です。

例えば、

「普通の速度なら聞き取れる」

のであれば、そこから、

普通 → 少し速い → 速い

と段階的に進めます。

さらに、

「どの音が分からないのか」

を細かく確認します。

これは運動学習と似ています。

難しい課題をただ繰り返すのではなく、

自分が今どこまでできるのかを確認して、課題の難易度を調整する

という考え方です。

それでも聞き取りにくい場合

もし、

  • 普段の会話でも聞き取りにくい

  • 周囲がうるさい場所で極端に聞き取りにくい

  • 音が聞こえているのに言葉として理解しにくい

  • 以前より聞き取りにくくなった

  • 片耳だけ聞こえにくい

  • 耳鳴りや耳の違和感がある

などの場合は、単純な「早口への慣れ」の問題ではない可能性があります。

聴力などに不安がある場合は、耳鼻咽喉科などの医療機関に相談することをおすすめします。

まとめ

早口が聞き取れない原因は、一つではありません。

例えば、

  • 音声処理に必要な時間が短くなる

  • 音の境界が分かりにくくなる

  • 単語の区切りを捉えにくくなる

  • 文脈からの予測が使いにくい

  • 知らない言葉が多い

  • 話し手の発音が不明瞭

  • 歌では音程やリズムなどの情報が増える

  • 聞こえていても言葉として理解する処理が追いつかない

などが考えられます。

そのため、

「早口が聞き取れない=耳が悪い」

と決めつける必要はありません。

まずは、

① ゆっくり聞く② 文字と音を一致させる③ 文字なしで聞く④ 少しずつ速度を上げる⑤ 何が聞き取れないのか分析する⑥ 実際の会話や歌で確認する

という流れで練習してみましょう。

そしてボイトレでは、

「声を出す練習」だけではなく、「自分の声を聞く練習」も大切

です。

自分の声を録音して、

「自分ではどう聞こえているのか?」

「実際にはどう聞こえているのか?」

を確認する。

この積み重ねが、自分の声を自分で調整する力につながっていきます。

最終的には、

先生に「ここを直してください」と言われ続けるのではなく、自分で「今の発音は少し不明瞭だった」と気づけるようになる事

を目指していきたいと僕は考えています。

ボイトレは、声を変えるだけではなく、

自分の声を観察して、自分で調整できるようになるための学習

でもあるからです。

参考文献

  • Mattys SL, White L, Melhorn JF. Integration of Multiple Speech Cues: Information Integration During Speech Perception. Journal of Memory and Language. 2005.

  • Davis MH, Johnsrude IS. Hearing speech sounds: Top-down influences on the interface between audition and speech perception. Hearing Research. 2007.

  • McClelland JL, Elman JL. The TRACE model of speech perception. Cognitive Psychology. 1986.

  • Norris D, McQueen JM, Cutler A. Perceptual learning in speech. Cognitive Psychology. 2003.

  • Pisoni DB, Luce PA. Acoustic-phonetic representations in word recognition. Cognition. 1987.

※音声の聞き取りには、聴覚・音声知覚・言語処理・注意・記憶・文脈など複数の要素が関係します。この記事では一般的な音声知覚とボイトレの観点から説明しており、個人の聞き取りの原因を診断するものではありません。

 
 

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