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努力性発声とは?声を頑張って出してしまう原因とボイトレの考え方

執筆者の写真: 内田のボイトレ
内田のボイトレ
10月8日
読了時間: 13分

はじめに

声や歌については、文章で説明すると、

どうしても分かりにくくなってしまうことがあります。

僕自身も、ボイトレや声について新しい知識を学んだとき、「なるほど」と頭では分かっても、実際に声を出してみるとすぐにはできないことがたくさんありました。

だからこそ、この記事では難しい内容もできるだけ分かりやすくまとめています。

すべてを一度で理解する必要はありません。

「そういう考え方もあるんだな」「これ、自分にも当てはまるかも」

そんなふうに、皆さんのボイトレや歌の練習の何か一つのヒントになれば嬉しいです。

そして、文章を読んでも「自分の場合はどうなんだろう?」と思ったら、ぜひ体験レッスンで直接質問してください。

実際に声を出しながら、一緒に確認していきましょう。

結論|「頑張って声を出す」と「努力性発声」は同じではありません

歌っている時に、

「なんだか声を押している」

「喉に力が入っている」

「高音になると頑張ってしまう」

「いつもより声を出すのが大変」

と感じることがあります。

このような状態を、日常的には「力んでいる」「喉に力が入っている」などと表現できます。

一方、音声医学・音声科学では、**vocal effort(発声努力)やvocal fatigue(声の疲労)**など、関連する概念があります。

研究では、長時間声を使った後に「声を出すのにより努力が必要になった」と感じることがあり、その感覚と発声に必要な圧力との関連も報告されています。(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

ただし、

「声を頑張って出している=病気」

という意味ではありません。

健康な人でも、声をたくさん使った時や、体調が悪い時、声への要求が高い時などに、一時的に発声努力が増えることがあります。(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

そのため、ボイトレでは、

「頑張っているかどうか」だけではなく、「いつ、どの条件で、どの程度努力が増えるのか」

を見ることが大切です。

努力性発声とは?

「努力性発声」という言葉は、一般的には、

声を出すために大きな努力を必要としているように感じられる状態

を説明する時に使われます。

例えば、

  • 声を出す時に喉が固まる

  • 首周りが疲れる

  • 声を押し出す感じがある

  • 高音になると急に頑張る

  • 大きな声を出すと苦しい

  • 長く歌うほど声を出すのが大変になる

  • 普段より声を出すためのエネルギーが必要に感じる

などです。

ただし、これらの感覚だけから、

「声帯が強く閉じすぎている」

「特定の筋肉が原因」

などと断定することはできません。

努力感には複数の要因が関係する可能性があります。

「努力感」と「声帯の状態」は同じではない

ここは、初心者の方が混乱しやすいところです。

本人が、

「すごく力を入れている感じがする」

と感じても、実際の喉頭の動きがどうなっているかは、感覚だけでは判断できません。

反対に、

本人にはそれほど苦しく感じなくても、実際の発声では大きな努力が必要になっている場合も考えられます。

そのため、

感覚=そのまま身体の中で起きている事

ではありません。

声の研究でも、「vocal effort」は本人が感じる主観的な側面を含む概念として扱われています。研究者間で用語の定義を整理する必要性も指摘されています。(pmc.ncbi.nlm.nih.gov)

なぜ声を「頑張って」しまうの?

原因は一つとは限りません。

例えば、

① 高い音を出そうとする

「高い音を出さなければ」

という意識が強くなると、声を押してしまう人がいます。

② 大きな声を出そうとする

「もっと大きく!」

と思った結果、必要以上に力を使ってしまうことがあります。

③ 音程を外したくない

音程を正確にしようとするあまり、身体全体が固くなることがあります。

④ 疲れている

普段なら楽にできる発声が、疲労時には難しく感じる場合があります。

⑤ 声を使いすぎている

長時間歌った後などに、発声努力が増えることがあります。

⑥ 乾燥や水分状態などの影響

声帯を含む声の仕組みは、組織の状態にも影響を受けます。

⑦ 心理的・自律神経的な要因

緊張やストレスなどが、声の使い方に影響する可能性もあります。

実際、声の過緊張に関する理論モデルでは、声への要求、身体的要因、環境、心理的要因など、複数の要素が相互に関係すると考えられています。(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

「もっと息を出す」と努力性発声が改善するとは限らない

歌で声が苦しい時、

「息が足りないのでは?」

と考える人もいます。

しかし、

息を増やせば必ず楽になるわけではありません。

声は、

呼吸 → 声帯振動 → 声道

という単純な一方向の仕組みだけではありません。

呼気の圧力、声帯の振動、声門の状態、声道の形などが相互に関係しています。

そのため、

「苦しい」↓「もっと息を出す」

という一つの方法だけでは解決できない場合があります。

むしろ、その人にとっては声を出すための努力がさらに増える可能性もあります。

高音で努力性発声が増える場合

高音になると、

「もっと頑張らなければ」

と思ってしまう人がいます。

すると、

  • 声量を上げる

  • 息を強く出す

  • 声を押す

  • 首や顎に力が入る

  • 喉周辺の努力感が増える

といった変化が起こることがあります。

ただし、

高音=努力性発声

ではありません。

高い音を出す時には、声帯の長さ・張力・振動に参加する部分などが変化します。

その調整が、その人にとって難しい条件になると、発声努力が増えることがあります。

だから、

「高音を出すためにもっと頑張る」

だけではなく、

「高音になった時、何が変わっているのか?」

を見ることが大切です。

「声量を上げる」と努力性発声が増える人

もう一つ多いのが、

小さい声なら楽なのに、大きな声にすると急に苦しくなる

というケースです。

声量を上げるためには、単純に「全部を強くする」わけではありません。

肺からの圧力、声帯の接触状態、声道との相互作用など、複数の要素が関係します。

そのため、

「大きい声を出す」=「喉を強くする」

ではありません。

むしろ、

大きな声を出そうとした時に、どこまで努力が増えているのか

を見ることが重要です。

声が疲れてくると「努力感」が変化する事がある

声を長時間使うと、

「最初は楽だったのに、後半になると頑張らないと声が出ない」

ということがあります。

研究では、長時間の発声課題によって、本人が感じる発声努力が増えることが確認されています。(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

また、声の疲労を調べた研究をまとめたレビューでは、音響測定や自己評価など、さまざまな方法が使われています。つまり、声の疲労を「一つの数字」だけで判断することは難しいという事です。(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

だから、

「今日の声はいつもより頑張らないと出ない」

という感覚自体も、無視しないほうがいい情報になります。

睡眠不足などで、いつもと違う声になる事もある

例えば、

「昨日はよく眠れなかった」

「今日は身体が重い」

という日に、

いつもと同じように歌おうとしても、

「声が出しにくい」

「高音が重い」

「いつもより力が入る」

と感じることがあります。

これは、

「自分の発声方法が突然下手になった」

と決めつける必要はありません。

身体全体の状態や声への負荷など、複数の要因を考える必要があります。

声の過緊張に関する理論モデルでも、声への要求が高くなった場合や、身体的・環境的・心理的な要因によって、一時的に発声努力が増える可能性が示されています。(pmc.ncbi.nlm.nih.gov)

水分状態も無視できない

声帯は粘膜を含む組織なので、水分状態は声の状態を考える上で無視できません。

乾燥した状態などでは、発声がいつもより大変に感じられる可能性があります。

ただし、

「水を飲めば努力性発声が全部治る」

という意味ではありません。

水分補給は声の健康を考える上で大切ですが、発声努力が増えている場合には、声の使い方や練習量なども一緒に考える必要があります。

「喉が締まる」と「努力性発声」は同じ?

似ていますが、完全に同じ言葉ではありません。

例えば、

「喉が締まっている感じがする」

というのは、本人の身体感覚です。

一方、

「発声に努力を感じる」

というのは、より広い意味で使えます。

例えば、

  • 喉だけではなく首が疲れる

  • 声を出すのに全身が頑張っている

  • 音程を取るのに力が必要

  • 長時間歌うほど努力が増える

などです。

そのため、

「喉が締まる=必ず努力性発声」

と決める必要もありません。

努力性発声と「声の過緊張」

音声医学では、**vocal hyperfunction(声の過緊張・過機能)**という考え方があります。

これは、声を出す時に喉頭周辺などの活動が過剰になっている状態を含む概念です。

ただし、

一時的に声に力が入った=病的な声の過緊張

という意味ではありません。

声の要求が一時的に高くなった時には、健康な人でも一時的な発声努力や疲労を感じることがあります。(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

一方で、発声努力や声の疲労が慢性的に続く場合には、専門的な評価が必要になることがあります。

努力性発声と筋緊張性発声障害(MTD)は同じではない

ここは医学的に特に注意したいところです。

努力して声を出している

というだけで、

「筋緊張性発声障害(Muscle Tension Dysphonia:MTD)です」

とは言えません。

MTDは医療的な診断・評価が必要な音声障害です。

声の過緊張に関する研究では、声の要求、心理的要因、身体的要因、感覚運動的要因など、複数の要素が関係するモデルが提案されています。(pmc.ncbi.nlm.nih.gov)

したがって、

「力んでいる=MTD」

という自己判断はしないほうが安全です。

ボイトレで見るなら「どの条件で努力が増えるか」

僕がボイトレで見たいのは、

「力んでいるか、いないか」

だけではありません。

例えば、

音程

低音では楽なのに、高音だけ努力が増える?

音量

小さい声なら楽なのに、大きくすると努力が増える?

母音

「あ」では楽なのに、「い」では苦しくなる?

方向

下から上へ行く時だけ苦しい?

上から下へ行く時は楽?

時間

歌い始めは楽なのに、後半で苦しくなる?

曲

特定の曲だけ努力が増える?

体調

睡眠や疲労によって変化する?

このように条件を分けると、

「努力性発声」という一つの言葉だけでは見えなかった違いが分かります。

録音して「努力感」と実際の声を比較する

ここでも、自分の声を録音する方法が役立ちます。

例えば、

「この部分はものすごく頑張った」

と思った場所を録音して聞いてみます。

すると、

「思ったより普通に聞こえる」

こともあります。

反対に、

「自分では楽だったのに、かなり強い声になっている」

こともあります。

この違いは、

身体感覚と音として聞こえる結果が完全に同じではない

ことを知る材料になります。

もちろん録音環境の影響はあります。

そのため、録音を「絶対的な判定」としてではなく、

自分の感覚と音の結果を比較するための道具

として使います。

「力を抜く」より「何を減らすのか」を考える

「力を抜いて」

と言われると、

「じゃあ全部の力を抜けばいいんだ」

と考えてしまう人がいます。

しかし、声を出すには身体の働きが必要です。

そのため、

力を全部なくす

という考え方ではなく、

必要以上の努力を減らせないか

と考えるほうが分かりやすい場合があります。

例えば、

「高音を出すために声量まで上げていないか?」

「音程を取るために身体まで固めていないか?」

「声を大きくするために、必要以上に押していないか?」

というように分解します。

努力性発声を考える時の7つのチェック

歌っていて「頑張っているな」と感じたら、次の項目を確認してみてください。

① どの音域で増える?

高音だけなのか、低音でも起こるのか。

② どの音量で増える?

小さい声でも起こるのか、大きな声だけなのか。

③ どの母音で増える?

母音によって違いがあるか。

④ 歌い始めからある?

最初からなのか、時間が経つと増えるのか。

⑤ 休むと戻る?

少し休むと、いつもの声に戻るのか。

⑥ 録音するとどう聞こえる?

自分の感覚と実際の音に違いはあるか。

⑦ 翌日の声はどうか?

その日の練習後だけの変化なのか、翌日まで続くのか。

こうした記録を続けると、

「自分はどんな条件で声を頑張りやすいのか」

が見えてくる場合があります。

内田のボイトレでは「頑張らない」だけを目標にしません

僕自身、ボイトレでは、

「力を抜きましょう」

だけで終わらせないようにしています。

なぜなら、

「力を抜いて」と言われても、本人は何をどう変えればいいのか分からない

ことがあるからです。

そこで、

「音量を変えたらどうなる?」

「音程を変えたら?」

「母音を変えたら?」

「下から上へ行ったら?」

「逆に上から下へ行ったら?」

など、条件を変えながら声を確認します。

そして、

「どの条件で努力が増えるのか」

を探します。

これは、

「頑張るな」

と我慢することとは少し違います。

必要以上の努力が増えにくい条件を探す

という考え方です。

「努力性発声をなくす」より「調整できる声」を目指す

歌では、

「力が入ったら全部ダメ」

と考える必要はありません。

声を出すためには筋肉が働きます。

また、音量や音域によって必要な調整も変化します。

だからこそ、

「力があるか、ないか」

の二択ではなく、

「必要な調整を自分でコントロールできるか」

という視点が大切だと僕は考えています。

例えば、

小さい声にもできる。

↓

必要なら少し大きくできる。

↓

高音でも調整できる。

↓

曲の中でも使える。

↓

疲れてきても大きく崩れない。

このように、

声の選択肢を増やす

ことを目指します。

痛みや声の変化が続く場合は医療機関へ

努力感があるからといって、すべてが病気というわけではありません。

しかし、

  • 声のかれが続く

  • 声を出すと痛い

  • 急に声が出しにくくなった

  • 話し声まで変化した

  • 呼吸や飲み込みに問題がある

  • 声の異常が繰り返し起こる

などの場合は、ボイトレだけで判断しないことが大切です。

特に長く続く嗄声(声のかれ)や痛みなどは、耳鼻咽喉科などの医療機関に相談してください。

ボイストレーナーは、発声の練習をサポートできますが、声帯の病気を診断することはできません。

まとめ|努力性発声は「頑張っているからダメ」ではない

努力性発声を考える時、

「力んでいるから悪い」

と単純に考える必要はありません。

大切なのは、

  • いつ努力感が増えるのか

  • どの音域で増えるのか

  • どの音量で増えるのか

  • どの母音で増えるのか

  • 時間とともに変化するのか

  • 体調によって変化するのか

  • 録音するとどう聞こえるのか

  • 休むと戻るのか

を確認することです。

そして、

「もっと力を抜こう」

だけではなく、

「なぜ今、この声を出すために頑張っているのだろう?」

と考えてみます。

努力感は、声への要求が高くなった時や、疲労、身体的・環境的・心理的な要因などによって変化する可能性があります。(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

だからこそ、

頑張らない声を作るのではなく、必要以上に頑張らなくても扱える声の選択肢を増やす。

これが、僕がボイトレで大切にしたい考え方です。

「高音が出る」

「大きな声が出る」

だけではなく、

「自分で声を調整できる」

ことも、声を扱う上で大切な能力だと考えています。

内田のボイトレ体験レッスン

「高音になると急に力が入る」

「歌っていると、だんだん声を頑張らないと出せなくなる」

「自分では力んでいるつもりがないのに、声が苦しくなる」

そんな方は、実際に声を出しながら確認してみてください。

どの音域、音量、母音、フレーズで声の努力感が変わるのか。

一つずつ条件を変えながら、自分の声の特徴を一緒に確認していきます。

文章だけでは分かりにくい部分も、実際に声を出してみると見えてくることがあります。

参考文献

  • Hunter EJ, Cantor-Cutiva LC, van Leer E, et al. Toward a Consensus Description of Vocal Effort, Vocal Load, Vocal Loading, and Vocal Fatigue. Journal of Speech, Language, and Hearing Research. 2020;63(2):509–532. DOI: 10.1044/2019_JSLHR-19-00057. PMID: 32078404.

  • Chang A, Karnell MP. Perceived phonatory effort and phonation threshold pressure across a prolonged voice loading task: a study of vocal fatigue. Journal of Voice. 2004;18(4):454–466. DOI: 10.1016/j.jvoice.2004.01.004. PMID: 15567047.

  • Hillman RE, et al. An Updated Theoretical Framework for Vocal Hyperfunction. American Journal of Speech-Language Pathology. 2020. DOI: 10.1044/2020_AJSLP-20-00104.

  • Sereg-Bahar M, et al. Integrative Review and Framework of Suggested Mechanisms in Primary Muscle Tension Dysphonia. Journal of Voice. 2022. DOI等の詳細は掲載時に原著情報を確認。

  • Phonatory Tasks and Outcome Measures for Assessing Vocal Fatigue: A Scoping Review. Journal of Voice. 2024. PMID: 38523022.

  • Acoustic Metrics of the Strain Dimension of Voice Quality: A Scoping Review. Journal of Voice. 2025. DOI: 10.1016/j.jvoice.2025.08.018.

 
 

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