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リズム感は鍛えられる?歌が安定するために知っておきたいリズムの考え方

執筆者の写真: 内田のボイトレ
内田のボイトレ
10月8日
読了時間: 10分

はじめに

声や歌については、文章で説明すると、

どうしても分かりにくくなってしまうことがあります。

僕自身も、ボイトレや声について新しい知識を学んだとき、「なるほど」と頭では分かっても、実際に声を出してみるとすぐにはできないことがたくさんありました。

だからこそ、この記事では難しい内容もできるだけ分かりやすくまとめています。

すべてを一度で理解する必要はありません。

「そういう考え方もあるんだな」「これ、自分にも当てはまるかも」

そんなふうに、皆さんのボイトレや歌の練習の何か一つのヒントになれば嬉しいです。

そして、文章を読んでも「自分の場合はどうなんだろう?」と思ったら、ぜひ体験レッスンで直接質問してください。

実際に声を出しながら、一緒に確認していきましょう。

結論|リズム感は「才能」だけで決まるものではありません

「自分はリズム感がないから、歌が上手くならない」

そう考えている方は少なくありません。

しかし、リズムに関する研究を見ると、リズム能力は単純に「ある・ない」で分けられるものではありません。

音楽のリズムには、

  • 拍を感じる

  • テンポを保つ

  • 音のタイミングを予測する

  • 音楽に合わせて動く

  • 自分の声や動作をタイミングよく出す

  • ズレを聞き取って修正する

など、複数の能力が関係しています。

そのため、

「リズム感がない=才能がない」

と簡単に決めつけるのは適切ではありません。

一方で、すべての人が同じように上達するとも限りません。

個人差はあります。

大切なのは、

「リズムが苦手」と感じたときに、何が苦手なのかを分けて考える事

です。

そもそも「リズム」と「テンポ」は違います

まず、言葉を整理してみましょう。

テンポとは?

テンポは、簡単に言えば、

音楽がどのくらいの速さで進むか

を表すものです。

「BPM」という単位がよく使われます。

例えば、

60 BPMなら、1分間に60拍。

120 BPMなら、1分間に120拍です。

つまり、数字が大きくなるほど基本的には速いテンポになります。

拍(ビート)とは?

拍は、音楽の中で一定の間隔で感じられる時間のまとまりです。

「1・2・3・4」と数えるときの、その「1」「2」「3」「4」のようなものです。

ただし、実際の音楽では、すべての拍が同じ強さで鳴っているとは限りません。

リズムとは?

リズムは、音が時間の中でどのように並んでいるかという、より広い概念です。

例えば、

「ター・ター・タタ・ター」

のように、音の長さや間隔に変化があります。

つまり、

テンポ=全体的な速さ

拍=時間の基準となるまとまり

リズム=音が時間の中で作るパターン

と考えると、初心者の方にも分かりやすいと思います。

なぜ歌でリズムがズレるのでしょうか?

歌のリズムがズレる原因は、一つとは限りません。

例えば、

① 曲の拍を感じにくい

曲を聴いていても、

「今どこが1拍目なのか」

が分かりにくい場合があります。

この場合、歌詞を覚えていても、どのタイミングで歌い始めるのかが不安定になる場合があります。

② 歌詞に集中しすぎる

歌では、

  • 音程

  • 歌詞

  • 発音

  • 声量

  • 声質

  • 呼吸

  • 表現

など、同時に考える事がたくさんあります。

そのため、リズムそのものへの注意が減ると、タイミングがズレる場合があります。

③ 自分の声を聞いて修正するのが遅れる

歌は、

「聞く → 声を出す → 自分の声を聞く → 修正する」

という循環があります。

歌唱では聴覚と運動の連携が重要であり、音楽のタイミングを合わせる能力にも聴覚‐運動の連携が関係しています。

つまり、単純に「リズムを覚えれば終わり」というわけではありません。

④ 先を予測するのが難しい

リズムでは、今鳴っている音だけを聞いているわけではありません。

次に来る拍を予測しながら、動いたり歌ったりしています。

音楽の時間処理では、このような時間的な予測が重要な役割を持つと考えられています。

「走る」「遅れる」も別々に考える

歌のリズムでよくある悩みが、

「歌が走る」

というものです。

これは、歌が伴奏より少し早くなってしまう状態です。

逆に、

「歌が遅れる」

場合もあります。

例えば、

「サビになると急に走る」

という人なら、サビの歌詞や音程に意識が集中して、タイミングの調整が変化している可能性があります。

反対に、

「難しい歌詞の部分だけ遅れる」

なら、言葉を処理する時間と発声タイミングの関係を確認する必要があります。

そのため、

「リズム感が悪い」

だけでは、原因を十分に説明できません。

歌とリズムには「聴覚」と「運動」の連携が関係する

リズム練習を考えるうえで重要なのが、

聴覚‐運動連携

です。

少し難しい言葉ですが、簡単に言えば、

「聞いた時間情報を、自分の動きや声を出すタイミングにつなげる働き」

です。

例えば、メトロノームが

「カッ・カッ・カッ・カッ」

と鳴ったとします。

それに合わせて手を叩く場合、

  1. 音を聞く

  2. 次の拍を予測する

  3. 手を動かす

  4. 実際のタイミングと聞いた拍を比較する

  5. 次の動きを調整する

という処理が関係します。

歌でも似たような仕組みが必要になります。

「このタイミングで声を出す」

という運動を、音楽の時間情報と合わせていくからです。

歌唱とビートへの同期能力には関連が見られた研究もあります。

リズム練習では「聞くだけ」ではなく「合わせる」事も大切

音楽をたくさん聴くことは、音楽に慣れるという意味では役立つ可能性があります。

ただし、

聞いているだけ

と

実際にタイミングを合わせる

ことは同じではありません。

例えば、

  • 手拍子をする

  • 足で拍を取る

  • 声を入れる

  • 短いフレーズを合わせる

  • メトロノームに合わせる

など、自分の動作や声を音楽に合わせる経験も重要になります。

研究でも、音楽経験のある人は、メトロノームなどへの同期課題で、平均的により正確で安定したタイミングを示す研究があります。

ただし、このような研究だけから、

「練習すれば全員が同じレベルになる」

とまでは言えません。個人差や課題の違いがあります。

「メトロノームに合わせる=リズム練習」だけではありません

メトロノームは便利な道具ですが、それだけで歌のリズムすべてを説明できるわけではありません。

実際の歌には、

  • 歌詞

  • 音符の長さ

  • 休符

  • シンコペーション

  • アクセント

  • フレーズ

  • 伴奏

  • 他の楽器との関係

などがあります。

そのため、

一定の拍に合わせる能力

と

曲の複雑なリズムを歌う能力

は、完全に同じではありません。

まず単純な拍に合わせられるようになり、そこから実際の歌へつなげていくという考え方が分かりやすいでしょう。

「カラオケでは歌えるのに、アカペラだとズレる」のも不思議ではありません

以前の記事でも触れましたが、伴奏がある場合とアカペラでは、使える情報が違います。

カラオケでは、

  • ドラム

  • ベース

  • ピアノ

  • ギター

  • 原曲のリズム

など、タイミングを判断するための情報が増えます。

一方、アカペラになると、それらの外部情報が少なくなります。

そのため、

伴奏があると歌えるけれど、アカペラになるとタイミングが不安定になる

という事は十分に考えられます。

これは「リズム感がない」と一言で決めつけるより、

外部の音を使ってタイミングを調整するのが得意なのか、自分の中で拍を保つのが難しいのか

と考えたほうが、練習につなげやすくなります。

自分の歌を録音して聞いてみる

リズムの練習では、録音も役立つ方法の一つです。

歌っている最中は、

「ちゃんと合っている」

と思っていても、録音を聞くと、

「ここだけ少し早い」

「この言葉だけ遅れている」

と気付く場合があります。

特に、

  • Aメロ

  • Bメロ

  • サビ

  • 難しい歌詞

  • 音程が高くなる場所

などに分けて確認すると、自分の傾向を把握しやすくなります。

ただし、録音も完全に客観的なものではありません。

マイクの位置や部屋の音響、録音機器によって聞こえ方は変わります。

そのため、

録音=絶対的な正解を測る装置

ではなく、

自分の歌を振り返るための材料

として使うのがおすすめです。

「リズムが苦手」を具体的に分解してみる

例えば、次のように考えてみます。

症状

確認したい事

曲の頭からズレる

拍の位置を感じられているか

サビで走る

音程・声量・歌詞との関係

歌詞が多い場所で遅れる

言葉の処理と発声タイミング

伴奏がないとズレる

内部で拍を保つ能力

手拍子は合うが歌うとズレる

声を出す運動との連携

ゆっくりなら合う

テンポ上昇による処理の変化

速い曲だけ苦手

時間的な余裕や運動制御

特定のリズムだけ苦手

リズムパターンの理解・予測

このように見ると、

「自分はリズム感がない」

ではなく、

「どの条件でタイミングが崩れるのか」

を探せるようになります。

内田のボイトレで大切にしたい考え方

僕は「リズム感がない」という言葉だけで、生徒さんを判断しないようにしたいと思っています。

例えば、

「リズムが苦手」

と言っても、

  • 拍を感じにくい

  • 曲のスタートが苦手

  • 歌詞で遅れる

  • サビで走る

  • 伴奏がないと不安

  • 自分の声を聞きながら修正するのが難しい

  • 特定のリズムだけ苦手

など、状態は違います。

だからこそ、実際の声を聞きながら、

「どこで、どのようにズレるのか」

を見ることが大切だと考えています。

そして、最初から難しい曲を完璧に歌おうとするのではなく、

簡単なタイミング↓短いフレーズ↓歌詞を付ける↓実際の曲↓伴奏なしでも確認する

というように、条件を少しずつ変えていく考え方もあります。

これは、単純に「反復すればいい」という話ではありません。

練習では、同じ条件を繰り返すだけでなく、条件を変えたときにも身につけた能力を使えるかという**転移(transfer)**も重要になります。

「リズム感を鍛える」ときに大切なのは、正解を覚える事だけではない

リズム練習では、

「正しいタイミングで歌えた」

だけで終わらせないことも大切です。

例えば、

なぜ今は合ったのか?

なぜ次は早くなったのか?

を確認してみます。

録音を聞いたり、伴奏を小さくしてみたり、テンポを変えてみたりすると、自分の特徴が見えてくる場合があります。

音楽のリズムには、拍の知覚、予測、運動との同期など複数の要素が関係しています。

そのため、リズム練習も、

「リズム感を鍛える」という一つの練習ではなく、自分の苦手な部分を見つけて練習する

という考え方が重要だと思います。

まとめ

リズム感は、

「生まれつきある人だけが持っている才能」

と単純に考える必要はありません。

一方で、リズム能力には個人差があり、誰でも同じように上達するとは限りません。

音楽のリズムには、

  • 拍

  • テンポ

  • リズムパターン

  • タイミング

  • 予測

  • 聴覚‐運動連携

など、さまざまな要素が関係しています。

歌でリズムがズレるときも、

「リズム感が悪い」

と一括りにするのではなく、

「どの場面で、どのようにズレるのか?」

を見ることが大切です。

そして、

聞く → 歌う → 自分の声を聞く → 比較する → 修正する

という循環を作っていくことも、歌のタイミングを考えるうえで役立ちます。

「リズム感がない」と諦める前に、

自分の場合は、何が難しいのか?

を一緒に探してみる。

それが、内田のボイトレで大切にしたい考え方の一つです。

参考文献

  • Snyder JS, Gordon RL, Hannon EE. Theoretical and empirical advances in understanding musical rhythm, beat and metre. Nature Reviews Psychology. 2024;3:449–462.

  • Teki S, Grube M, Griffiths TD. A unified model of time perception accounts for duration-based and beat-based timing mechanisms. Frontiers in Psychology. 2012.

  • Zatorre RJ, Chen JL, Penhune VB. When the brain plays music: auditory-motor interactions in music perception and production. Nature Reviews Neuroscience. 2007;8:547–558. DOI: 10.1038/nrn2152.

  • Dalla Bella S, Berkowska M, Sowiński J. Moving to the Beat and Singing are Linked in Humans. Frontiers in Human Neuroscience. 2015;9:663. PMID: 26733370.

  • Repp BH, Doggett R. Tapping to a Very Slow Beat: A Comparison of Synchronization and Continuation. Music Perception. 2007.

  • Repp BH, Keller PE. Adaptation to tempo changes in sensorimotor synchronization: Effects of intention, attention, and awareness. Quarterly Journal of Experimental Psychology. 2008.

  • Dalla Bella S, Berkowska M, Sowiński J. Musicians and non-musicians show different timing patterns in synchronization tasks. Human Movement Science. 2010. DOI: 10.1016/j.humov.2009.08.002.

  • Phillips-Silver J et al. The Psychology of Music: Rhythm and Movement. Annual Review of Psychology. 2018;69:51–75. DOI: 10.1146/annurev-psych-122216-011740.

 
 

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