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ラ行が苦手な理由とは?発音しにくい原因と改善方法をボイトレの視点から解説

執筆者の写真: 内田のボイトレ
内田のボイトレ
10月9日
読了時間: 13分

はじめに

声や歌については、文章で説明すると、

どうしても分かりにくくなってしまうことがあります。

僕自身も、ボイトレや声について新しい知識を学んだとき、「なるほど」と頭では分かっても、実際に声を出してみるとすぐにはできないことがたくさんありました。

だからこそ、この記事では難しい内容もできるだけ分かりやすくまとめています。

すべてを一度で理解する必要はありません。

「そういう考え方もあるんだな」「これ、自分にも当てはまるかも」

そんなふうに、皆さんのボイトレや歌の練習の何か一つのヒントになれば嬉しいです。

そして、文章を読んでも「自分の場合はどうなんだろう?」と思ったら、ぜひ体験レッスンで直接質問してください。

実際に声を出しながら、一緒に確認していきましょう。

「ラ行が苦手です」

ボイトレをしていると、こういう相談を受けることがあります。

例えば、

  • 「ら・り・る・れ・ろ」が言いにくい

  • 歌になるとラ行が崩れる

  • 早口になるとラ行がうまく発音できない

  • 「ラ」が「ダ」のように聞こえる

  • 「ラ」が「ヤ」のように聞こえる

  • 舌がうまく動かない

  • ラ行になると歌詞が不明瞭になる

などです。

ラ行は一見すると簡単な音に思えるかもしれません。

しかし、日本語のラ行は、舌の位置・動き・タイミングを細かく調整する必要がある音です。

そして、歌では発音だけではなく、

音程・リズム・母音・声量・息の流れ

なども同時にコントロールする必要があります。

そのため、

「普段は言えるのに、歌になるとラ行が苦手」

という事も起こります。

そもそも日本語の「ラ行」はどんな音?

まず、日本語のラ行を考えてみましょう。

一般的な日本語のラ行の子音は、音声学では**歯茎はじき音(alveolar tap /ɾ/)**として説明されることが多いです。

例えば、

「ラ」

「リ」

「ル」

「レ」

「ロ」

では、子音の部分で舌の前方が歯茎付近に素早く近づき、短い接触を作るような動きが起こります。

英語の /r/ とは、基本的に別の音です。

ここは非常に大切です。

日本語のラ行と英語のRは違う

「ラ行が苦手」と聞くと、

「舌を丸めればいいの?」

と思う方もいるかもしれません。

しかし、日本語のラ行と英語の /r/ は、同じ「R」のように扱うことはできません。

英語の /r/ は、日本語のラ行とは異なる舌の形や声道の狭め方を使います。

一方、日本語のラ行では、舌の前方が歯茎付近に短時間接触するような動きが特徴的です。

つまり、

日本語のラ行を練習するなら、日本語のラ行に合った舌の動きを考える必要があります。

ラ行が苦手な理由① 舌の動きがうまく作れない

まず考えられるのが、

舌の前方を素早く動かすことが苦手

というケースです。

日本語のラ行では、舌をずっと押し付けるわけではありません。

むしろ、

素早く動かして、短い接触を作る

ことが重要です。

そのため、

「舌を上にしっかり付けよう」

と頑張りすぎると、かえって動きが遅くなることがあります。

「ラ」を出そうとして、

舌を強く押し付ける

↓

舌が離れにくくなる

↓

「ラ」ではなく、別の音に近づく

という事も考えられます。

ラ行が苦手な理由② 舌に力が入りすぎている

もう一つ考えられるのが、

舌を動かそうとするあまり、力を入れすぎている

ケースです。

舌は細かく形を変えられる器官ですが、必要以上に力を入れると、素早い動きがしにくくなる場合があります。

例えば、

「ラ!」

と強く発音しようとして、

舌をガチッと上に付ける。

すると、

「タ」

「ダ」

に近いような音になってしまう場合があります。

日本語のラ行では、

強く押すことより、適切な位置へ素早く動かすこと

が重要です。

ラ行が苦手な理由③ 舌の「タイミング」が合っていない

ラ行では、

舌の位置だけではなく、タイミングも重要です。

歌では特に、この問題が出やすくなります。

例えば、

「さくら」

という言葉を歌うとします。

「さ・く・ら」

と発音するだけなら、比較的ゆっくり考えられます。

しかし、歌になると、

音程

↓

母音

↓

リズム

↓

子音

↓

次の音

を短い時間の中で処理する必要があります。

そのため、

「舌を動かすこと自体はできる」

のに、

歌のテンポになるとラ行だけ遅れる

ということがあります。

これは単純な「舌の筋力不足」とは限りません。

むしろ、

発音運動のタイミングを音楽の時間軸に合わせること

が課題になっている可能性があります。

ラ行が苦手な理由④ 前後の母音の影響を受ける

ラ行は、

「ラ・リ・ル・レ・ロ」

と全部同じではありません。

後ろに続く母音によって、舌や口の形も変わります。

例えば、

「ラ」

「リ」

「ル」

では、子音の後に続く母音のために、舌や唇などの構えが変化します。

そのため、

「ラは言えるけど、リが苦手」

「ルだけ発音しにくい」

という事もあります。

これは、

ラ行そのものが苦手なのではなく、特定の音の組み合わせが難しい

可能性があります。

「ラ」だけを練習すればいいとは限らない

例えば、

「ラ」が苦手だから、

「ラ、ラ、ラ、ラ……」

と何度も繰り返す。

これは一つの練習方法にはなります。

しかし、それだけでは、

「歌詞の中でラ行を使える」

ところまでつながらない場合があります。

なぜなら実際の歌では、

「ラ」

単独ではなく、

「サクラ」

「キラキラ」

「あなたから」

など、前後の音とつながって出てくるからです。

そのため、

単音 → 音節 → 単語 → フレーズ → 歌

というように、少しずつ実際の使用場面に近づけていく考え方が役立ちます。

ラ行が「ダ行」のようになる場合

例えば、

「ラ」が「ダ」のように聞こえる場合があります。

日本語のラ行は、舌が歯茎付近に短く接触するため、ダ行などと近い要素があります。

そのため、

舌の接触のタイミングや持続時間、舌の動き方などの違い

が、聞こえ方に影響する可能性があります。

ただし、実際にどのような音になっているかは人によって違います。

「ダに聞こえる」という結果だけから、

「舌がこうなっている」

と断定することはできません。

録音して実際の音を確認したり、必要に応じて言語聴覚士などに評価してもらうことが適切な場合もあります。

ラ行が「ヤ行」のようになる場合

一方、

「ラ」が「ヤ」のように聞こえるケースもあります。

この場合も、

「舌の前方の動きが十分に作れていない」

など、さまざまな可能性があります。

ただし、

音の聞こえ方だけで舌の動きを完全に判断することはできません。

同じ「ラが苦手」でも、原因となる運動パターンは人によって異なるからです。

歌になるとラ行が苦手になる理由

ここからは、ボイトレとして特に重要な部分です。

普段の会話では、

「ラ」

と言える。

でも、

歌になると急にラ行が苦手になる。

こういう場合があります。

歌では、

  • 音程

  • リズム

  • 呼吸

  • 声帯振動

  • 音量

  • 母音

  • 子音

  • 音色

  • フレーズ

などを同時に調整する必要があります。

つまり、

ラ行だけの問題ではなく、歌唱全体の運動課題の中でラ行が難しくなっている

可能性があります。

歌では「子音を出すタイミング」が重要

歌の場合、

「ラ」という音をきれいに発音しようとして、舌の動きを大きくすると、

その分だけ次の母音の開始が遅れてしまうことがあります。

例えば、

「ラ」をきれいに言おう

↓

舌をゆっくり大きく動かす

↓

母音の開始が遅れる

↓

歌のリズムが遅れる

ということです。

そのため、

発音を明瞭にすることと、動きを大きくすることは同じではありません。

むしろ歌では、

必要な動きを、必要なタイミングで、必要な大きさだけ行う

ことが重要になります。

改善方法① まず「ラ」ではなく舌の動きを確認する

いきなり歌詞で練習するのではなく、

まず舌がどのように動いているのか確認してみます。

鏡を使って口の中を確認するのは難しいですが、

「舌を上に動かせるか」

「舌を前後に動かせるか」

「力を抜いて素早く動かせるか」

など、自分の感覚を観察することはできます。

ただし、

「この感覚なら必ず正しいラ行」というものではありません。

人によって舌の形や動きには個人差があります。

改善方法② 「強く付ける」より「軽く素早く」

日本語のラ行では、

「舌を強く上に押し付ける」

ことを目的にしないほうがよい場合があります。

まずは、

軽く動かして、短い接触を作る

ことを意識してみます。

例えば、

「ラ」

「ラ・ラ」

「ラ・ラ・ラ」

と、ゆっくり確認します。

ポイントは、

舌に必要以上の力を入れないこと。

そして、

音を大きくするために舌を強く動かさないこと。

です。

改善方法③ 母音を変えて練習する

次に、

「ラ・リ・ル・レ・ロ」

を試します。

もし、

「ラはできる」

「リだけ難しい」

のであれば、

全部を同じように練習する必要はありません。

例えば、

「リ」

↓

「リ・リ」

↓

「リリ」

↓

「リズム」

のように、

苦手な音を中心に少しずつ複雑にしていきます。

改善方法④ 前後の音とつなげる

次に、

「ラ」

だけではなく、

「アラ」

「イラ」

「ウラ」

「エラ」

「オラ」

など、前後の音とつなげていきます。

さらに、

「サクラ」

「キラキラ」

「カラオケ」

など、実際に使う言葉へ進みます。

これは、

単独の発音能力から、実際の発話・歌唱で使える能力へ移行する

ための練習です。

改善方法⑤ 歌では「歌詞 → リズム → 音程」の順番を変えてみる

歌でラ行が崩れる場合、いきなり原曲と同じように歌うのではなく、

① 歌詞を話す

まず普通に話してみます。

↓

② リズムに合わせて話す

メロディーをつけず、リズムだけ合わせます。

↓

③ メロディーを小さな声でつける

ラ行の動きを確認しながら歌います。

↓

④ 通常の声量で歌う

最後に通常の歌唱へ戻します。

このように、

難しい条件を一度に全部やらない

ことがポイントです。

改善方法⑥ 録音して確認する

ラ行の練習では、

自分ではできていると思っていても、実際に聞くと違う

ということがあります。

そこで、

「ラ行を含むフレーズ」

を録音してみます。

そして、

「自分にはどう聞こえる?」

と確認します。

可能なら、

「先生にはどう聞こえる?」

とも比較します。

このように、

自分の感覚 → 実際の音 → フィードバック → 次の練習

という流れを作ります。

これは、これまで僕が書いてきた「気づく → 確認する → 試す」というボイトレの考え方ともつながります。

改善方法⑦ 最初から「完璧なラ」を目指さない

発音練習で意外と重要なのが、

最初から完璧を狙いすぎないこと

です。

例えば、

「ラを100%正確に言わなければ」

と思うと、舌に力が入ってしまうことがあります。

まず、

「少しラらしくなった」

「前よりタイミングが合った」

という小さな変化を確認します。

そして、

少し改善する

↓

確認する

↓

もう一度試す

というサイクルを作ります。

「舌を鍛えればラ行が上手くなる」は単純化しすぎ

ラ行が苦手だと、

「舌の筋肉が弱いのでは?」

と思う方もいるかもしれません。

しかし、

ラ行の苦手さ=舌の筋力不足

とは限りません。

発音は、

  • 舌の位置

  • 舌の形

  • 舌の速度

  • 動きのタイミング

  • 前後の音との協調

  • 聴覚的なフィードバック

  • 運動学習

など、複数の要素から成り立っています。

そのため、

「舌を鍛える」

だけで解決すると考えるのは単純化しすぎです。

発音も「運動学習」と考える

ラ行の練習を考えるとき、僕は運動学習という視点も大切だと思っています。

最初は、

「舌をここに動かす」

と意識する。

↓

少しできるようになる。

↓

何度も繰り返す。

↓

少しずつ意識しなくてもできるようになる。

という流れです。

発音は、毎回、

「舌をここに置いて……」

と考えながら話すものではありません。

最終的には、

意識しなくても必要なタイミングで舌が動く

状態を目指します。

そのためには、

単純な反復だけではなく、

実際の言葉や歌の中で使えるように練習条件を変えていくことも大切です。

「ゆっくりできる」と「歌で使える」は違う

例えば、

「ラ・ラ・ラ」

なら完璧に言える。

でも、

速い歌詞になると、

「ラ」が崩れる。

これは珍しいことではありません。

なぜなら、

単純な発音課題

と

歌唱中の発音

では、要求される運動が違うからです。

そのため、

「ゆっくりできた」

だけで終わらず、

少しずつ実際の歌に近づけていく

必要があります。

それでもラ行がどうしても発音しにくい場合

ここは大切なので、無理に「ボイトレだけで解決できる」と考えないでください。

もし、

  • 日常会話でもラ行がかなり発音しにくい

  • 長期間改善しない

  • 他の発音にも問題がある

  • 舌の動かしにくさが強い

  • 発音について本人がかなり困っている

という場合には、ボイトレだけではなく、言語聴覚士(ST)など発音を専門に評価する専門家に相談することも選択肢になります。

特に、発音の問題が「歌だけ」なのか「普段の会話にもある」のかは、考えるうえで重要な情報です。

ボイトレでは、

歌唱中の発音・声・リズム・音程などの調整

を扱います。

一方、発音そのものに継続的な問題がある場合には、専門的な評価が役立つことがあります。

内田のボイトレで考える「ラ行改善」の流れ

僕なら、ラ行が苦手な方に対して、いきなり、

「ラを100回練習しましょう」

とは考えません。

まず、

① どんな時に苦手なのか?

話すとき?

歌うとき?

速くなるとき?

特定の音程?

特定の母音?

↓

② 実際にどんな音になっているのか?

「ダ」に近い?

「ヤ」に近い?

音が抜ける?

遅れる?

不明瞭になる?

↓

③ 舌はどう動いているのか?

位置?

動き?

タイミング?

力み?

↓

④ 条件を簡単にして試す

単音

↓

音節

↓

単語

↓

フレーズ

↓

歌

↓

⑤ 録音して確認する

「できたと思った音」と、

「実際に聞こえる音」

を比較する。

この流れで原因を考えていきます。

ラ行は「舌の問題」だけではない

最後に、一つ覚えておいてほしいことがあります。

ラ行が苦手だからといって、

「舌が悪い」

と決めつける必要はありません。

発音は、

舌・顎・唇・声道・呼吸・聴覚・タイミング・運動学習

などが関係する複雑な運動です。

さらに歌では、

発音+音程+リズム+声帯振動+音楽表現

を同時に行います。

だからこそ、

「ラ行が苦手」

という結果だけを見るのではなく、

「どの条件で、何が起きているのか?」

を考えることが大切です。

まとめ

ラ行が苦手になる理由には、

  • 舌の動かし方

  • 舌に入りすぎた力

  • 舌を動かすタイミング

  • 前後の母音との協調

  • 発音運動の習慣

  • 歌唱中の複数課題

  • 運動学習の段階

など、さまざまな可能性があります。

特に歌の場合、

「ラを発音できる」ことと「歌の中でラ行を自然に使える」ことは同じではありません。

そのため、

単音 → 音節 → 単語 → フレーズ → 歌

と、少しずつ実際の使用場面に近づけていく方法が考えられます。

そして、練習では、

気づく → 確認する → 試す

というサイクルを作ることも大切です。

ラ行は、

「舌を強く鍛えればいい」

「舌をこの形にすれば必ず正解」

という単純な問題ではありません。

一人ひとりの発音を確認しながら、

どの動きが、どのタイミングで、どのように変われば良いのか

を考えていく。

それが、僕が考えるラ行のボイトレです。

もし「普段の会話では言えるのに、歌になるとラ行だけ崩れる」という場合は、発音そのものだけではなく、歌唱中の舌の動きとタイミング、そして音程やリズムとの協調を確認してみると、原因が見つかるかもしれません。

参考文献

Preston JL, Leece MC, Maas E.Tutorial: Motor-Based Treatment Strategies for /r/ Distortions. Language, Speech, and Hearing Services in Schools. 2020;51(4):1015–1030.DOI: 10.1044/2020_LSHSS-20-00003.

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