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F0とは?声の高さと声帯の振動を初心者向けに解説

執筆者の写真: 内田のボイトレ
内田のボイトレ
10月7日
読了時間: 10分

はじめに

声や歌については、文章で説明すると、

どうしても分かりにくくなってしまうことがあります。

僕自身も、ボイトレや声について新しい知識を学んだとき、「なるほど」と頭では分かっても、実際に声を出してみるとすぐにはできないことがたくさんありました。

だからこそ、この記事では難しい内容もできるだけ分かりやすくまとめています。

すべてを一度で理解する必要はありません。

「そういう考え方もあるんだな」「これ、自分にも当てはまるかも」

そんなふうに、皆さんのボイトレや歌の練習の何か一つのヒントになれば嬉しいです。

そして、文章を読んでも「自分の場合はどうなんだろう?」と思ったら、ぜひ体験レッスンで直接質問してください。

実際に声を出しながら、一緒に確認していきましょう。

F0とは?

ボイトレや声について調べていると、

「F0(エフゼロ)」

という言葉が出てくることがあります。

F0は、

Fundamental Frequency(基本周波数)

の略です。

簡単に言うと、

声帯の振動によって生まれる音の基本的な繰り返しの速さを表す数値

です。

F0は通常、**Hz(ヘルツ)**という単位で表します。

そして、一般的には、

F0が高いほど高い声に聞こえ、F0が低いほど低い声に聞こえる

という関係があります。

ただし、F0と「私たちが感じる音の高さ」は完全に同じものではありません。

F0は物理的な音響量であり、「高く聞こえる・低く聞こえる」という感覚は**ピッチ(音高)**と呼ばれる知覚に関係します。

そのため、初心者の方には、

F0=声の高さに深く関係する、声の基本的な振動の速さ

と考えると分かりやすいでしょう。

F0の数値はどのくらい?

F0について調べると、

「男性は100〜150Hzくらい」

「女性は180〜250Hzくらい」

という目安を見ることがあります。

確かに、このような範囲は成人の話し声を説明するときの大まかな目安として紹介されることがあります。

ただし、

これは「男性なら必ず100〜150Hz」「女性なら必ず180〜250Hz」という意味ではありません。

実際のF0にはかなり個人差があります。

年齢、身体的特徴、話し方、発話内容、感情、測定条件などによっても変化します。

そのため、ボイトレでF0を見るときには、

「この数字だから正常」

と単純に判断するのではなく、

「その人の声がどのように変化しているのか」

を見ることが大切です。

例えば、研究では男性話者のほうが女性話者より低いF0を示す傾向が確認されていますが、個人差もあります。

100Hzと200Hzでは何が違う?

Hz(ヘルツ)は、

1秒間に何回、周期的な振動が繰り返されるか

を表す単位です。

例えば、

100Hz

なら、単純化すると1秒間に約100回の周期があることを意味します。

200Hz

なら、約200回です。

つまり、

100Hz → 振動の周期が遅い

200Hz → 振動の周期が速い

という違いがあります。

このため、一般的には200Hzのほうが100Hzより高い音として知覚されます。

ただし、実際の声は単純な正弦波ではなく、さまざまな周波数成分を含んでいます。

そのため、

F0だけで声の聞こえ方すべてを説明することはできません。

なぜ声帯の振動が速いと高い声になるの?

ここがF0を理解するうえで重要なところです。

声を出すとき、左右の声帯が空気の流れによって振動します。

この振動が速くなると、基本的にはF0が高くなります。

逆に、振動が遅くなるとF0は低くなります。

では、

なぜ声帯の振動する速さが変わるのでしょうか?

声帯の振動には、

  • 声帯の長さ

  • 声帯の質量

  • 声帯の張力

  • 声帯の振動に関与する部分

  • 声門下圧などの空気力学的条件

など、複数の要素が関係しています。

特に声帯の長さ・質量・張力は、F0を考える上で重要な要素です。F0が声帯の長さや質量、張力などの影響を受けることは、声の生理学・生体力学の研究で広く扱われています。

「声帯が薄く短くなると高くなる」は少し注意が必要

初心者向けには、

声帯が薄く、短くなって、速く振動すると高い声になる。

という説明を見かけることがあります。

方向性としては理解しやすいのですが、厳密には少し注意が必要です。

声帯は、単純な一本のゴムのように、

「長くなる」

「短くなる」

「厚くなる」

「薄くなる」

だけで説明できるものではありません。

実際には、

どの部分が振動に参加しているのか

声帯の張力がどう変化しているのか

声帯の形や接触状態がどう変化しているのか

などが関係します。

そのため、より正確には、

高い声では、声帯の長さ・張力・振動に関与する質量などが変化し、結果として声帯の振動速度が速くなり、F0が高くなる。

と考えるほうが適切です。

高音になると声帯はどう変化する?

歌で低い音から高い音へ上がっていくとき、声帯は単純に「速く振動する」だけではありません。

声帯の長さや張力、振動する部分などが変化します。

例えば高音域では、声帯を伸ばしたり張力を調整したりする働きが重要になります。

ただし、

「高音=声帯が単純に薄くなる」

とだけ説明するのは不十分です。

高音発声では、声帯の形態や振動状態が複雑に変化します。

実際、歌唱中の声帯形態を調べた研究でも、音高の変化に伴って声帯の形態や振動状態が変化することが報告されています。

つまり、

音程が上がる

↓

声帯の調整が変化する

↓

振動状態が変化する

↓

振動周期が短くなる

↓

F0が高くなる

という関係をイメージすると分かりやすいでしょう。

F0と「音程」はどう関係する?

歌ではF0と音程が非常に深く関係しています。

例えば、

「この音を歌ってください」

と言われたとします。

まず耳で目標となる音を聞きます。

そして、

「このくらいの高さだ」

と認識します。

その後、発声器官を調整して、声のF0を目標の音に近づけます。

さらに、自分が出した声を聞いて、

「少し低い」

「少し高い」

と判断し、必要に応じて調整します。

つまり歌では、

聞く

↓

目標音を認識する

↓

声を出す

↓

自分の声を聞く

↓

目標音と比較する

↓

必要に応じて調整する

という流れが起こります。

このような聴覚と発声運動の連携は、歌唱における音程調整を考えるうえで重要です。

F0が高ければ「高い声」なの?

基本的には、

F0が高いほど高い音として知覚される傾向があります。

しかし、

F0が高い=必ず「良い高音」

ではありません。

例えば、F0が目標音まで上がっていても、

  • 喉が苦しい

  • 声が不安定

  • 声が急に裏返る

  • 声量を維持できない

  • 何度も繰り返すと疲れる

ということがあります。

逆に、F0だけを見れば少しずれていても、本人の声の出し方や調整の仕方には別の情報があるかもしれません。

そのため、

F0は発声を考えるための一つの情報

と考えるのが大切です。

F0と「声がひっくり返る」ことの関係

以前の記事で、

「高音に行くと声がひっくり返る」

という症状について説明しました。

これにもF0が関係しています。

低い音から高い音へ移動すると、目標となるF0も上がっていきます。

その過程で、声帯の振動状態や接触状態なども変化します。

この変化がうまく調整できず、発声状態が急に変わると、

「声がひっくり返った」

と感じることがあります。

ただし、

「ひっくり返る=F0が急に上がった」

という単純な話ではありません。

声帯の振動メカニズム、声帯の閉鎖、声量、母音、呼気など、複数の要素が関係する可能性があります。

F0とM1・M2は同じではない

F0を勉強していると、

M1・M2

という言葉も出てくると思います。

ここは混同しやすいところです。

簡単に分けると、

F0

→ 声の基本的な振動周波数を表す「数値」

M1・M2

→ 喉頭の振動メカニズムを分類する「考え方」

です。

つまり、

F0とM1・M2は別のものです。

例えば、

「F0が300HzだからM2」

と、F0の数字だけからM1・M2を決めることはできません。

また、

「○○Hzを超えたら必ずM2になる」

というような全員に共通する固定された境界があるわけでもありません。

個人差や発声条件も関係します。

F0と音色も違う

「高い声」と「明るい声」は同じ意味ではありません。

例えば同じような音の高さでも、

  • 明るく聞こえる声

  • 暗く聞こえる声

  • 太く聞こえる声

  • 軽く聞こえる声

  • 息っぽく聞こえる声

などがあります。

これはF0だけでは説明できません。

声帯で作られた音には、基本周波数であるF0だけではなく、複数の周波数成分が含まれます。

さらに、その音が喉や口などの声道を通ることで、特定の周波数成分が強調されたり弱くなったりします。

このような違いが、声の音色にも関係します。

したがって、

F0=音色

ではありません。

「F0が高い=声が大きい」でもない

これもよくある誤解です。

F0は基本的に、

声の高さに関係する指標

です。

一方、

声の大きさ

には、音圧や声帯の振動振幅、声門の閉鎖、呼気など、別の要素が関係します。

そのため、

高い声=大きい声

ではありません。

小さな高音もありますし、大きな低音もあります。

F0を測ると何が分かる?

現在はスマートフォンやパソコンなどでも、声のF0を表示できる場合があります。

例えば歌を録音して、

「自分が目標音より低いのか?」

「高いのか?」

「どの音でF0が変化しているのか?」

などを見ることができます。

これは、自分の歌を客観的に観察するための一つの材料になります。

ただし、

F0の数値だけで歌が上手いかどうかを判断することはできません。

また、音声分析ソフトやアプリによっては、声質やノイズなどの影響でF0の検出が不安定になる場合もあります。

そのため、

数字を絶対的な答えとして扱わない

ことも大切です。

内田のボイトレではF0を「答え」ではなく「観察する材料」として考える

僕は、F0のような数値を使って声を見ることは面白いと思っています。

感覚だけでは分かりにくい部分を、

「数字として確認する」

ことができるからです。

例えば、

「高音が出ない」

という悩みでも、

  • F0が目標音まで上がらない

  • F0は上がるけれど声が苦しい

  • F0は合っているけれど声質が急に変わる

  • F0が急に変化して声がひっくり返る

  • 疲れるとF0の調整が不安定になる

など、いろいろな状態が考えられます。

だからこそ、

「F0の数字を見る」

だけではなく、

「実際の声を聞く」

「本人の感覚を確認する」

「どの条件で声が変化するかを見る」

ということも一緒に考えたいと思っています。

まとめ

F0とは、

Fundamental Frequency(基本周波数)

のことで、

声の基本的な振動周波数を表す数値

です。

一般的には、

F0が高い → 高い声

F0が低い → 低い声

という関係があります。

成人の話し声では、男性でおおむね100〜150Hz、女性で180〜250Hz程度という目安が紹介されることがありますが、これはあくまで大まかな目安です。

個人差が大きいため、

「この範囲から外れたらおかしい」

という意味ではありません。

また、高い声では声帯の長さ・張力・振動に関与する質量などが変化し、声帯の振動速度が速くなることでF0が高くなります。

ただし、

「声帯が薄く短くなれば高音になる」

という一つの仕組みだけで説明することはできません。

声帯の振動は、もっと複雑な仕組みで起こっています。

そして、

F0とM1・M2は同じものではありません。

F0は「数値」であり、M1・M2は「喉頭の振動メカニズム」を分類する考え方です。

F0は、歌の音程や高音発声を考えるうえで非常に役立つ指標ですが、

F0だけで声の良し悪しや歌の上手さを決めることはできません。

数字と実際の声、そして本人の感覚を合わせて考えることが大切です。

「F0って自分の声ではどうなっているんだろう?」

「高音でF0はどう変化しているんだろう?」

そんな疑問があれば、ぜひ体験レッスンで直接質問してください。

実際に声を出しながら、一緒に確認していきましょう。

参考文献

  • Delaram V, Miller MK, Ananthanarayana R, et al. Gender and speech material effects on the long-term average speech spectrum, including at extended high frequencies. The Journal of the Acoustical Society of America. 2024;156(5):3056–3066. DOI: 10.1121/10.0034231.

  • Zhang Z. Principal dimensions of voice production and their role in vocal expression. The Journal of the Acoustical Society of America. 2024;156(1):278–283. DOI: 10.1121/10.0027913.

  • Natke U, Grosser-Glück B, Jürgens R, et al. Control of voice fundamental frequency in speaking versus singing. The Journal of the Acoustical Society of America. 2003. DOI: 10.1121/1.1543928.

  • Herbst CT. A Review of Singing Voice Subsystem Interactions—Toward an Extended Physiological Model of “Support”. Journal of Voice. 2017;31(2):249.e13–249.e19. DOI: 10.1016/j.jvoice.2016.07.019.

  • Unteregger F, et al. Changes in Vocal Fold Morphology During Singing Over Two Octaves. Journal of Voice. 2020;34(2):165–169. DOI: 10.1016/j.jvoice.2018.08.020.

  • National Institute on Deafness and Other Communication Disorders (NIDCD). Taking Care of Your Voice.

 
 

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