ボイトレの効果はどう判断する?|上達を左右する目標設定・練習方法・講師との連携

はじめに
声や歌については、文章で説明すると、どうしても分かりにくくなってしまうことがあります。僕自身も、ボイストレーニングや声について新しい知識を学んだとき、理解に時間がかかりました。この記事が、ボイトレをする上でのひとつのヒントになればと思います。詳しくは内田のボイトレ体験レッスンで、直接ご質問ください。
ボイトレの効果は、何を基準に判断すればよい?
ボイストレーニングを続けていると、
「本当に上達しているのだろうか?」「高い声が出るようになれば、効果があったと言えるのだろうか?」「どのくらい練習すれば、目標に近づけるのだろうか?」
と疑問に感じる事があるかもしれません。
ボイトレの効果を判断するときは、最高音が上がったかどうかだけでなく、自分が目指している状態に近づいているかを確認する事が大切です。
例えば、高音を出せるようになりたい人と、音程を安定させたい人では、確認するべきポイントが異なります。
声が疲れやすい人、声量を調整したい人、歌詞を聴き取りやすくしたい人も同様です。
まずは、自分が何を改善したいのかを明確にし、その課題に合った方法で練習できているかを確認してみましょう。
内田のボイトレで大切にしている考え方
1.今できていない事と、目指したい状態を明確にする
僕がボイトレで大切だと考えているのは、今できていない事と、これからどうなりたいのかを明確にする事です。
例えば、単に「歌が上手くなりたい」という目標だけでは、何を練習すればよいのかが分かりにくい場合があります。
もう少し具体的に考えてみましょう。
高音で声が不安定になるので、安定して歌えるようになりたい
サビになると喉に力が入る感覚があるので、無理の少ない発声を身につけたい
音程がずれる事があるので、狙った音に合わせられるようになりたい
声が小さくなりやすいので、曲に合った声量で歌えるようになりたい
ライブの日までに、特定の曲を通して安定して歌えるようになりたい
このように目標が具体的になると、何を確認し、どのような練習を行うのかを考えやすくなります。
ただし、目標は最初から完璧に決める必要はありません。レッスンを通して、自分が苦手だと思っていた事とは別の課題が見つかる場合もあります。
そのときは、必要に応じて目標や練習内容を見直していきます。
2.課題に合ったレッスンを受ける
目標を明確にしたら、次に考えたいのが、その人の課題に合ったトレーニングを選べているかという点です。
同じように高音が出にくいと感じていても、その背景にある問題が全員同じとは限りません。
例えば、音程の取り方に課題がある人と、発声時に力みが生じやすい人では、必要な練習が異なる可能性があります。
また、歌詞や母音によって歌いやすさが変わる人もいれば、特定の音域で声の出し方が不安定になる人もいます。
そのため、ある人に効果があった練習方法が、別の人にも同じように適しているとは限りません。
内田のボイトレでは、目標だけでなく、現在どのような状態なのかを確認し、その人の課題に合った練習を考える事が大切だと考えています。
ボイストレーナーには、受講者の状態を観察し、必要な練習を選び、実際の反応を確認しながら調整する事が求められます。
もちろん、声の状態や課題によっては、レッスンだけで原因を特定できない場合もあります。声の不調が続く場合などは、医療機関への相談が必要になる事もあります。
3.正しい方向で、効率よく練習する
練習時間を増やせば、必ず同じ割合で上達するというわけではありません。
何を目的に練習しているのか、適切な方法で実施できているのか、練習した結果を確認できているのかも大切です。
例えば、高音が苦手な人が、ただ高い音を何度も繰り返して出そうとしても、課題に合った練習になっていなければ、望んだ変化につながらない場合があります。
また、練習中に何が変化したのかを確認せず、同じ方法を繰り返していると、改善の方向性を判断しにくくなる事があります。
僕は、目標と課題を明確にしたうえで、適切なトレーニングを選び、その結果を確認しながら練習を進める事が大切だと考えています。
課題に合った方法で効率よく取り組めれば、目標に近づく可能性を高められます。
ただし、上達の速度や到達できる範囲には個人差があります。練習方法が適切であっても、短期間で必ず目標を達成できるとは限りません。
ボイトレの効果を左右する、自主練習の質
4.レッスンで習った事を、自分でも再現できるか
レッスンの時間だけでなく、自主練習の取り組み方も、上達を考えるうえで大切です。
レッスン中にはできていた事が、一人で練習すると再現できない場合があります。
その場合は、単純に練習量が足りないと考えるのではなく、どの部分で再現できなくなるのかを確認してみましょう。
例えば、次のような原因が考えられます。
練習の目的を十分に理解できていない
どのような感覚や音を目指すのか、判断基準が曖昧になっている
練習方法の手順が分からなくなっている
一度できたものの、毎回同じようには再現できない
自分ではできていると思っていても、実際の声が目標と異なっている
これらは一例であり、すべての人に当てはまるわけではありません。
自主練習では、ただ回数をこなすだけでなく、何を目指して、どのように練習し、結果をどう確認するのかを理解しておく事が大切です。
5.生徒さんが、ある程度正しく練習できる状態をつくる
自主練習を効果的に行うには、受講者本人の努力だけでなく、レッスンでの説明や練習方法の伝え方も関係します。
ボイストレーナーが練習方法を伝えても、受講者が目的や手順を理解できていなければ、意図した練習を再現するのは難しくなります。
そのため、レッスンでは、練習方法を伝えるだけでなく、次のような点を確認できるとよいと考えています。
何を改善するための練習なのか
どのような音や感覚を目指すのか
できているかどうかを、どのように確認するのか
うまくいかないときは、どう対応すればよいのか
自主練習では、どこまで取り組めばよいのか
受講者が自分でも練習の方向性を判断できるようになると、レッスン以外の時間も活用しやすくなります。
一方で、すべてを受講者一人で判断できるようになるまでには、時間がかかる場合もあります。
分からない事があれば、次のレッスンで質問し、練習方法を確認する事も大切です。
練習は多ければ多いほどよいのか?
6.練習のやり過ぎにも注意する
上達したいという気持ちが強いと、できるだけ多く練習しようと考える事があるかもしれません。
しかし、練習量を増やす事だけが、上達につながるわけではありません。
発声には身体的な負荷が伴います。疲労が強い状態で練習を続けると、声の状態が変化したり、練習の質が落ちたりする可能性があります。
また、喉に違和感があるのに、無理に声を出し続ける事は避けたいところです。
練習では、時間や回数だけでなく、次のような点にも注意しましょう。
練習を続けると、声が出しにくくなっていないか
発声時の力みが強くなっていないか
音程や声の安定性が大きく崩れていないか
疲労が強くなり、練習の質が落ちていないか
練習後に声の不調が続いていないか
これらの変化があれば、練習を中断したり、量や方法を見直したりする事を検討してください。
声のかすれや出しにくさなどが続く場合は、自己判断で練習を続けず、耳鼻咽喉科などの医療機関に相談する事も大切です。
必要な練習量は、課題や練習内容、本人の状態によって異なります。すべての人に共通する最適な練習時間を、一律に決める事はできません。
大切なのは、無理に練習量を増やす事ではなく、自分の状態を確認しながら、継続できる方法を選ぶ事です。
ボイストレーナーとのコミュニケーションも大切
7.レッスンで感じた事を、遠慮せずに伝える
ボイトレの効果を高めるためには、ボイストレーナーとのコミュニケーションも大切です。
例えば、レッスン中に「この練習は何のために行っているのだろう?」「説明された感覚が分からない」「自宅では同じようにできない」と感じる事があるかもしれません。
そのようなときは、遠慮せずに質問してみてください。
受講者が感じている事を講師が把握できれば、説明の仕方や練習内容を調整する手がかりになります。
また、次のような情報も、レッスンに役立つ場合があります。
自主練習で上手くいった事、上手くいかなかった事
練習中や練習後に感じた変化
目標に対する不安や疑問
歌いたい曲や、目指している歌い方
練習に使える時間や、続けるうえでの悩み
ボイストレーナーが一方的に指導するだけでなく、受講者が感じている事を共有しながら進める事で、現在の課題を把握しやすくなります。
もちろん、講師の説明が分かりにくい場合に、受講者だけが努力して理解しなければならないわけではありません。別の言い方で説明したり、実際に声を出して比較したりするなど、伝え方を工夫する事も講師側に求められます。
目標や課題、練習の結果を共有し、必要に応じて方法を見直せる関係を築く事が大切です。
ボイトレの効果を確認する5つのポイント
ここまでの内容を踏まえて、実際に上達を確認するときのポイントを整理します。
1.以前できなかった事が、できるようになったか
以前は難しかったフレーズを歌えるようになった、音程が安定する場面が増えたなど、具体的な変化を確認します。
最初に設定した目標に対して、どの程度近づいているのかを振り返ってみましょう。
2.目指している歌い方に近づいているか
高音が出せるようになる事が目標なのか、声の響きを変えたいのか、曲全体を安定して歌いたいのかによって、評価するポイントは異なります。
自分の目標に沿った基準で確認する事が大切です。
3.同じ事を繰り返し再現できるか
一度だけ上手くできても、毎回同じようにできるとは限りません。
日や練習の回によって、どの程度安定して再現できるかを確認します。
ただし、体調や疲労などによって変化する事もあるため、一回の結果だけで判断しないようにしましょう。
4.実際の曲でも活用できるか
練習用の発声ではできていても、歌詞やリズムが加わると難しくなる場合があります。
トレーニングで身につけた事を、実際に歌いたい曲の中でも活用できるか確認してみましょう。
5.練習の方法や課題を理解できているか
上達を確認する際は、歌声の変化だけでなく、自分の課題を把握し、適切な練習を選べるようになっているかも振り返ってみましょう。
以前よりも、何が上手くいかないのか、どう練習すればよいのかを具体的に説明できるようになっていれば、それも今後の練習に活かせる変化です。
練習の記録を残す方法
上達を確認するためには、録音や簡単なメモを活用する方法もあります。
例えば、練習のたびに次の内容を記録します。
今回の目標: 何ができるようになりたいか
現在の課題: 何が上手くいかないか
練習した内容: どのような方法を試したか
練習後の変化: 何が変わったか、変わらなかったか
次回の課題: 次に何を確認するか
細かい記録を毎回つける必要はありません。自分が続けやすい方法で、気づいた事を残しておくとよいでしょう。
また、録音を比較する場合は、できるだけ同じ曲やフレーズ、似た録音条件を使うと変化を確認しやすくなります。
ただし、録音の印象だけでは判断できない事もあります。必要に応じて、講師からのフィードバックや、自分が歌っているときの感覚も合わせて振り返ってみてください。
まとめ|目標・課題・練習方法をつなげる事が大切
ボイトレの効果を判断するときは、最高音が上がったかどうかだけでなく、自分が目指している状態に近づいているかを確認する事が大切です。
内田のボイトレでは、次の点を重視しています。
今できていない事と、目指したい状態を明確にする
課題に合ったトレーニングを選ぶ
自主練習でも、目的と方法を理解して取り組む
練習のやり過ぎを避け、声の状態を確認する
ボイストレーナーとコミュニケーションを取り、必要に応じて方法を見直す
僕は、目標と課題が明確になり、その人の状態に合った効率的なレッスンを受け、自主練習でも適切な方向で取り組めれば、目標に近づく可能性を高められると考えています。
そのためには、ボイストレーナーが受講者の課題を把握し、適したトレーニングを提供できるかどうかが大切です。同時に、受講者が練習の目的を理解し、自主練習の中で再現できるかどうかも関係します。
そして、練習の結果や疑問を講師と共有し、必要に応じて修正していく事も欠かせません。
ただ長時間練習するのではなく、何を目指し、何を練習し、どのように結果を確認するのか。
この流れを意識する事が、ボイトレをより効果的に活用するための一つの方法です。
上達の速度や結果には個人差があります。焦って練習量だけを増やすのではなく、自分に合った目標と練習方法を見つけ、少しずつ取り組んでいきましょう。
参考資料
Knickerbocker et al., The Degree of Change and Relationship in Self-perceived Handicap and Acoustic Voice Quality Associated With Voice Therapy(音声治療における本人の評価と音響的な声の評価の変化に関する研究)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35667985/
The effects of musical feedback training on metacognition and self-directed learning(音楽のフィードバック練習とメタ認知・自己主導型学習に関する研究)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10764022/
Singing Voice Sciencehttps://www.singingvoicescience.com/
Voice Sciencehttps://www.voicescience.org/learn/articles/
※参考資料は、声の評価やフィードバックを考えるための情報源です。これらの研究が、本文で述べたすべての指導上の考え方や練習方法の効果を直接証明しているわけではありません。内田のボイトレとしての経験則と、研究によって検討されている内容は区別して捉える必要があります。


